僕はよくわからないけど呆れられたようです
稔はメッセージがたくさん来るようになったようです。
僕が仕事をしていると、吉田君が話しかけてきた。
「星田さん! 今日もキレッキレっすね!」
吉田君……別に僕は普通だよ? どうしたのかな?
「そうなのかな? 皆が頑張ってくれているから僕も頑張らないとって思ってるよ」
「まじ凄いっすよ! 第一ソフトの案件をあっという間に仕上げたって聞いたっすよ!」
あ……あの件かぁ……いきなり仕事持ってきちゃったし……悪い事したかな?
「第一ソフトの件は、僕が仕事を持ってきちゃったから自業自得だよ。昔のシステムだから僕が基本部分を仕上げた方が良くて、後は任せられるから凄い助かる感じだよ」
「またまた、謙遜しちゃって! 田辺さんが凄い勉強になる仕事って言ってたっす! でも、あまり俺は役に立てなくて……落ち込んでいたんっす……でも、星田さんが俺を引き立ててくれて感謝っすよ!」
え? 何かしたのかな僕?
「何知らないフリしてるんっすか! 星田さんが社長に僕が適任だって言ってくれたって聞いてますよ! 星田さんが軽くアテを紹介すれば終わりの話だったのに俺にまわしてくれて……絶対にチャンスをものにしようと、週末頑張らせてもらいました!」
あ……そういえば、薫姉さんにスタッフ部門の増員の相談受けたっけ?
「僕は開発の人は知ってるけど、そんなに顔が広いわけじゃないよ? 吉田さんは交流が広いし、僕なんかより最適だって思って社長に紹介したんだよ。仕事押し付けちゃって申し訳ないよ」
「何言ってるんですか! 星田さんが社長に話をしてもらえなかったら、この話はなかったんっすよ! 絶対に成功させますから!」
なんか、吉田君が頑張る気になって良かったよ。
「お二人共、仕事に集中してください。稔さんは第一ソフトさんからの追加の注文を確認して頂けないでしょうか? 稔さんのおかげで第一ソフトさんの仕事は増えていますが、難しい案件が多いので……」
あ、凛子さんに注意されちゃった。たしかに仕事中だし、良くなかったね。
「すみません、凛子さん。すぐに仕事始めますね」
ふと凛子さんの指を見るとネイルにパンダが書かれている。でも、ここで大きな声で話すのは行けないよね……そっと伝えておこうかな?
「色々気を使って頂きありがとうございます。それとパンダのネイルデザイン可愛いですね。似合っていますよ」
周りに聞こえないように僕は凛子さんに耳元で伝えた。これなら大丈夫だよね。あれ? 凛子さんは何もいわないで社長室に急いで戻っていったよ? 何か顔が赤かったけど、どうしたのかな?
「星田さんパネェっす。林に何を言ったんっすか?」
「え? 特に何もしてないよ? ところで凛子さんを『林』って吉田さんは呼ぶのですね」
「ええ。同期っすから。でも、林のことを『凛子さん』って呼ぶのは社長以外に星田さんぐらいっすよ。俺は怖くて言えないっす」
そうなのかな? 凛子さん全然怖くないけどな……
◇
その夜、僕が家でご飯を作っていると薫姉さんが訪ねてきたよ。
「邪魔するで、今日は何作っとるん?」
「今日は豚のしょうが焼きですね。薫姉さんも食べますか?」
僕は訪ねつつも皿を2枚準備をする。だって、既に薫姉さんは僕の冷蔵庫からビール取り出して飲み始めてるんだもん。
「そや? お試しデートやらは上手くいったんか?」
「あ……結果を話してませんでしたね。楽しかったですよ」
生姜焼きが焼けたので、皿に盛り付けて薫姉さんに差し出す。僕の分の生姜焼きを皿に盛り付けて、食卓テーブルに向かう。
「で? 付き合ってるんか?」
「まだ、そんな感じではありませんよ。前に言ったとおり、お見合いでいきなり付き合うって訳ではなく、お試しデート継続中です。次は来週の土曜日に一緒に御飯作ろうかって話しています」
薫姉さんはスマホを取り出して、「付き合ってるわけではない」とブツブツいいながらスマホをいじっている。仕事のメールかな?
「薫姉さん? こんなときまで仕事しないでいいじゃないですか……ビールのお替わりもってきましょうか?」
「ほな、頼むわ。それで付き合うつもりなのか?」
僕は自分と薫姉さんのビールを取り出しながら、色々と思い浮かべる。
「そうできたら良いですが……こればっかりは相手の事もありますし、前に大失敗しましたから……」
「そやな。それで稔はアホなことしたからな」
う……薫姉さん……軽くえぐってるよ……まあ、あれが無かったら薫姉さんとも出会えなかったんだし……ってメッセージアプリが鳴ったよ。
「薫姉さん、すみません。少しスマホ見ますね」
黒崎さんからのメッセージは、ご飯の写真だ。「美味しそうですね」っと返信してと……
「いま噂のお試しデートの彼女からか?」
薫姉さんは小指を立てながら聞いてくる。ちょっと言い方がお下品だよ?
「違いますよ。静江さんは、あまりメッセージはしませんね。さっきのは前の会社の子です」
「ほう……お試しデートの相手は静江っていうんか。もう既に名前呼びなんやな……って、さっき前の会社の子って言ったか?」
あ……薫姉さんに言ってなかったけ? ちょうどいいから色々と聞いてみようかな?
「はい。偶然出会って仲直りしたんですよ。彼女も強く言い過ぎたって言ってました。でも、それからメッセージがよく来るようになったんですよ。何ででしょうね?」
「稔‥‥お前、お人好し過ぎへんか? 一度フラれた相手やろ……」
薫姉さん……また軽くえぐったよ。い……今はお友達だもん! クスン……
「仲直りして友達になったから良いんですよ! ……そういえば最近、幼馴染の妹分からや凛子さんからもメッセージが来るようになったんですよ。不思議ですよね?」
薫姉さんが何か呆れた顔をしてる? 「それモテ期ちゃうんか」とかブツクサ言ってるよ? モテ期なんて、あるわけないじゃん。薫姉さん面白いこと言うよね?
モテ期って気付けないですよね。明らかに稔はモテ期を迎えてるんですけどね……




