僕は女性への配慮が足りなかったみたいです
服を買いに出かけた稔は黒崎さんと出会い、そのまま連行されたようです。
僕は黒崎さんと一緒に服を選ぶことにしたけど、これって、周りからみたらデートに見えるんじゃないかなぁ? ほら周りもなんか「リア充爆発しろ」みたいな目で僕のことみてるし……。ごめんなさい、黒崎さんみたいな可愛い子を連れて歩いてごめんなさい。
「あの、黒さ……じゃなくて、美玲?」
一瞬、黒崎さんにジト目でみられて、思わず言い直しちゃったよ。
「どうしたの? 稔」
「どうして名前呼びをしろって言ったの?」
「あれ? 忘れたの? 稔が私に告白した時に名前呼びをしたでしょう? だから、名前で呼びたいのかなって?」
うわー。黒崎さん、あの時の事覚えてたんだ……確かにあの時は勢いで名前呼びしたけど……嫌じゃないのかな?
「あの時の事は謝るよ。僕もかなり不摂生だったし、み……美玲も気持ち悪かったと思うし……」
「さっき、許してあげるって言ったでしょう? 告白された時はちょっと引いたけど、その後の合コンの二次会で稔と話をしていて楽しかったから……」
よかった。許してくれたみたいだよ。しかも、楽しいっていってくれたよ。
「もう、その事はいいから。稔は服を探してるんでしょ!」
◇
何故か僕は黒崎さんと居酒屋にいるよ。あの後、服を一緒に選んで……というか着せかえ人形みたいにされた。女の子の買い物は長いって聞いてたけど、こういう事だったんだ。まあ、楽しそうだったから良かったけど……
「稔、聞いてる?」
それで今は黒崎さんの愚痴を絶賛視聴中。黒崎さんってこんなキャラだったっけ?
「稔が会社辞めたから大変なの。フォローする人がいなくなったって営業が言ってて、トラブル起きて経理精算のやり直しが多くなったのよ」
うわー。合コンの時も愚痴を言っていたけど、今日はなんか一段とひどいね。黒崎さんは経理だから大変なんだろうな……
「ところで、家の都合で辞めたって聞いていたけど、プログラムスタイルに勤めてるって事は嘘だったのかな? もしかして私のせい?」
本当の事を言ったら、黒崎さんトラウマになっちゃうかもしれない……これは誤魔化さなきゃ……
「全然、美玲は関係ないよ。ちょっと思うことがあって転職をしたんだ」
「ふーん、そっか。ところで、稔は格好良くなったね」
ふー、よかった。変なトラウマは植え付けてないで済みそうだよ。え? 格好良くなった? 生まれ変わりの努力はしたけど、普メンぐらいになったぐらいだし……
「それで、前に私を好きって言ったのは本当?」
え……えぐってくるよ、黒崎さん。確かにあの時は浮かれてたけど、黒崎さんと僕なんかが釣り合うわけ無いじゃん……
「うん。あの時の気持は本当だったよ。でも、僕なんかが黒崎さんと釣り合わないのはわかってるから、今はそういう事は考えないようにしてるよ」
「そ……そうよね。あの時の稔は酷かったものね。いきなり好きだとか言われたらビックリするのは当然だし……でも、本当なんだ。じ……じゃあ、改めて友達にならない? 私も今の稔と話をしていて楽しいから。み……稔が嫌だったら別にいいんだからね」
◇
よくわからないけど、黒崎さんと友達になって、あの後にメッセージアプリのIDの交換までしちゃったよ。どうなってるの?
あれ? 電話がかかってきた。由美ちゃんからだ。どうしたんだろう……
『もしもし、稔お兄ちゃん? いま電話しても大丈夫?』
「由美ちゃん、どうした?」
『今日、お兄ちゃんっぽい人を街で見たんだけど、あれはお兄ちゃん? 綺麗な女の人と歩いてたみたいだけど』
おかしいな? 前の会社に近い感じじゃなかったけど、由美ちゃんも同じところにいたのかな?
「うーん、どうかな? 白と青のストライプのワイシャツを着てたらな僕かな?」
『やっぱり、そうなんだ……で、隣にいた人は彼女?』
うわー。彼女に見えちゃったのか……黒崎さんに申し訳ないな……
「違うよ。前の会社でお世話になった人だよ。たまたま会ってね」
『ふーん、彼女じゃないんだ……それで、なんて名前なの?』
「え? 黒崎美玲さんって言うんだけど、どうしてそんなこと聞くんだい?」
『な……なんとなく名前を聞いておいたほうがいいと思ってね。その黒崎っていう人はお兄ちゃんに気があるの?』
黒崎さんが僕に気がある? まさか? 一度フラれてるのに、そんなことはありえないよ。
「あはは。まさか? 買い物に付き合ってもらっただけだよ」
『そうなんだ。今度お兄ちゃんが買い物に行くときは、私が一緒に選んであげるから、気がない女の人と行っちゃ駄目だよ。特に黒崎さんね。お兄ちゃんは鈍いところがあるみたいだし……』
うわ……由美ちゃんにとって頼りないお兄ちゃんになりたくないな。
「そうだね。ちょっと配慮が足りなかったね。由美ちゃんありがとう」
『お兄ちゃんには由美がいるからね! また連絡するね! お兄ちゃん大好き!』
「あはは、いつもありがとう。じゃあ、おやすみ」
まあ、黒崎さんと友達になったとはいえ、男といるところ見られたら女性は迷惑だよね。女性の視点って大事だなぁ。由美ちゃんに感謝だな。
水面下の戦いをうまく表現できていればいいのですが、男性方向からの物語なので難しいです。
私としては由美の「技あり!」って感じなのですが……




