1.おっさん→美少女の場合―4
最初は、何かの聞き間違えかと思った。
だが、男のピンクのビキニはその存在を主張するように激しく暴れ回っている。
自分の上にまたがろうとする様子を見て、ようやく、タモンは理解した。
「まっ……待て待て待て待て待て待て待て待て待てッ!? 子作りなんて、出来るわけがないだろう!?」
「ん? ……どういうことだ?」
「お、俺はゴリゴリの男だぞ!? こんな毛むくじゃらのおっさんに欲情するなんて、お前、もしかしてそっちの気があるのか!?」
男? おっさん? と怪訝な顔をして男は戸惑っていた。
「いや、オレの目にはどう見ても……十六歳の麗しい少女にしか見えないのだが」
十六歳? 少女? と今度はタモンが困惑する番である。
どうにも会話が噛み合わないので、男は部屋のカーテンを開けると、テーブルに置いてあった手鏡を持ってきた。
「召喚された後で混乱しているのか? ほら、これでよく自分の顔を見てみろ」
鏡に映った自分の顔を見て、タモンは絶句する。
くりくりとよく動く活発な目に、ぷるんと膨らんだ薄いピンク色の唇。
脱色をして明るい茶色になった髪の毛は、自身の肩の辺りまで伸びていた。
その顔は、どう見ても、自分の見知った顔である――
「ルナ!?」
ガタベ ルナ。
タモンの愛娘であり、双子の姉妹の姉である、ルナとまったく同じ顔であったのだ。
縛られている手足にも目を落とすと、華奢で細く、どう見ても自分の鍛え上げた体躯とは違っていた。
そういえば、さっきから自分が話している声もなんだか高めで可愛らしい気がする。
そして何よりも決定的なのは、ピンク色の二つの膨らみと、下腹部の構造の違いで――
(そ、そこはあまり見ないようにしよう)
親子関係とはいえ、気恥ずかしさにタモンは目を逸らしてしまう。