2.おっさん→美少女の場合 その2―5
こんな深い森の中で、果たして客などいるのかとタモンは心配していたのだが。
「薬草三本で、銀貨九枚でーす。毎度アリー!」
意外や意外、歩いていると一時間に一回くらいの割合で、武装をした冒険者やパーティーと遭遇をする。
「あ、ありがとうございましたー」
「行商人さん、ええ看板娘を見つけたなー。こりゃ、飛ぶように商品が売れるわけだ」
礼を言って頭を下げたタモンを、ジロジロと撫で回すような視線で見る戦士の親父。
大事な娘の体なのだ、客じゃなかったらブン殴ってると、内心タモンは腸が煮えくり返る思いだった。
「いやー、でも本当に師匠が来てくれて助かったわ! 売り上げがいつもの倍くらいあるもん!」
「というか……よくこんな森の中を、大勢の人間が歩いているな。そんな有名な場所なのか?」
「有名っていうか……ここは通称、“扉の森”。不定期に湧く“異世界ダンジョン”目当てで、多くの冒険者がうろつくってわけだ」
「“異世界ダンジョン”?」
何のことだが分からず、タモンは首を傾げた。
そのナチュラルな仕草に、思わずウォリはガッツポーズをしてしまう。
「……何か妙なことを考えたか?」
「え!? そ、そんなわけないじゃん!!
……ででで、異世界ダンジョンのことだったよな。異世界ダンジョンは、その名前の通り異世界に続くダンジョンなんだ。でもそれは本当に別の世界が存在してるわけじゃなくて、あまりに強大な魔力を持った“魔遺物”が作り出した、仮初めの世界なんだよ」
「なんだか、難しくてよく分からんな」
「ははっ! 師匠、人のことをバカだバカだって言う割りには自分の方が脳筋だな!」
当然、ウォリは右ストレートを顔面に食らった。