1.おっさん→美少女の場合―10
圧倒的な情報量の前にタモンは混乱する。
自分とウォリは命を共有していて、その上で今、ウォリに口説かれている?
だけどこの体は娘のルナのもので、やっぱり父親としては、そんなこと許容できないわけで――
「あばばばばばばばばばばばばばば」
「うわあっ!? タモンさんが壊れた!? ちょっと落ち着いて、冷静になってくれ!!」
出されたコップの水を一気に飲み干して、タモンはゲボッと汚いゲップの音を出す。
「そういう仕草はマジでおっさんだな……」
「当たり前だろう。俺は元々ゴリゴリの男だぞ。そんな俺に筆下ろしを頼むこと自体間違ってるんだ」
「い、いやマジで困るんだって! だってオレ、オレ、このまま死んじまったらマジで――」
タモンの両手を取ったウォリは、目にいっぱいの涙を浮かべ、プライドを捨てて頼み込んだ。
「童貞のまま死んじまうんだっ……!!」
(人を襲おうとしたクセに童貞なのかよ!?)
あんなに場馴れしたようなセリフを口に出していたのに、高慢ちきな態度で人に迫ってきたのに。
そう思うと、タモンはおかしくてたまらなくなり――つい、ウォリの頭に手を当てて撫でてしまう。
「お前、心の底からバカな男だな。だけどそういうバカなヤツ、俺は嫌いじゃないぞ」
「え、え、え…………!?」
それまでの勢いは何処へいったのやら、ウォリはすっかり大人しくなって、タモンに頭を撫でられるのを受け入れていた。
途中、タモンは我に返って、何をやっているんだ俺は、と慌てて手を離す。