1.プロローグ
この「生徒と双子」は、「先生と双子」と同じ場面をそれぞれの視点で書いた話です。
先生と双子もよろしくお願いします。
私は虎石亜衣。中学校で理科の教師をしている。
私にとって特別な生徒が一人いる。それは三年生の山波陽奈。
教師は特別な生徒を作ってはいけない。そんなことをわかっていながら、陽奈を特別な目で見るようになってしまった。私の中では重大な問題だった。
私は元々性格が良いと周りから言われていたが、一部の人には猫を被ったように見えるらしく、小さい頃からバカにされていた。そんな私が教師をやっていてバカにする生徒もいるだろうと思っていたのだが、
想像を超えていた。
初めてもったクラスは1年1組で、女子は比較的大人しかったが、男子は一筋縄ではいかなかった。
私が怒らないことをいいことに、卒業までに先生を怒らせた人が勝ちというゲームまでできてしまった。
陽奈は私の教員生活で最初の生徒だった。
三年間クラスも、部活も一緒だった。
陽奈は毎日笑顔で登校してくる。月曜日の朝は私だって辛い。そんな時でも笑顔で登校してくる生徒を見ていたら、自然と私も笑顔になれる。
陽奈は演劇部に所属していて、部長も務めている。演劇力は学校一で、見た人は皆その世界に引き込まれていくような、不思議な子だった。
入学当時は成績が悪く学年最下位だったこともあるがコツコツと努力を積み重ねた結果、平均点を上回るまでになった。一番好きな教科は理科で、それは先生のおかげだといつも言ってくれた。
それが私の励みになっていたことを陽奈は知らないだろう。
陽奈だけに…そんなつもりはないのに、いつも陽奈のいいところが見えてしまう。悪いことではないが、陽奈に対してだけ起こるということが問題だろうと思う。
教師と生徒、私たちの前にはそんな大きな壁がある。でもいつかは伝えたい。あなたのおかげでここまで頑張ってこれたんだよって。




