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エピローグ

生まれ変わり Renatoリナートもようやく完結を迎えました!



僕の処女作で、紆余曲折があり着想から16年近く掛かりましたがなんとかゴールが迎えられました。

読者の皆さんに感謝致します。

 あの日―― 有紀が煉獄から戻ってきた日 ――


 有紀は病院の個室のベッドで目を覚ました。


 ベッドの側には、両親と弟の光輝、慎一の母敬子が居た。


「え、私……」


「有紀、大丈夫か?」

 目を覚ました有紀に父哲朗は声をかけた。


「あなた、あの『事件』の場所から川上さん、という救急隊の方のおかげで何とか逃れて、一周忌の法要の場所に連れてこられたでしょう?その間、参列していた皆様に一生懸命いろいろなお話をしていたの。そうしたら突然倒れて……」

 母淑子がそう説明した。


「そうなの…?」

 有紀は忽那によって煉獄へ連れ去られ、閻魔による慎一の裁きを見てきたことのすべてを閻魔によって記憶を消されていたのだ。


「そうなのって、覚えてないの?」

 光輝が驚いた表情で聞く。


「慎ちゃんの亡くなった場所で、お花を供えて、川上さんとお話ししたあたりから記憶がないわ」

 有紀は自分が何をやっていたのか少し怖くなった。


「おまえ、誰かが乗り移ったみたいに変な昔っぽい言葉をつかってたから皆さん心配していたんだぞ。しかし、父さん驚いたな。あの川上っていう人、慎一君になんというか瓜二つじゃないか」


「いつ知り合ったんだよ。姉ちゃん」

 

「慎ちゃんが亡くなった日よ」

 一同が静まり返った。


「あの方が、慎一を搬送してくれたのね?」

 敬子が悟ったように言った。


「ええ、お義母さま。私あの病院に駆けつけた時、川上さんを慎一さんと勘違いして」

 

「慎一にあそこまで似ているなんて、私も信じられなかったもの」

 敬子は笑顔でそう言った。


「光輝、へんな言い方しないでよ。もう!」

 有紀も笑顔でそう言い、続けて言った。


「目覚めるまで、慎ちゃんの夢をたくさん見た気がする」

 

 そんな目有紀を見てを細める両親と敬子。


 小さな声で敬子は哲朗に、


「有紀さん、慎一の事吹っ切れたみたいでよかったわ」

 と言った。


 哲朗も、

「ええ、でも、慎一君はいまでも私の息子ですよ。有紀も吹っ切れたかもしれませんが、絶対に忘れることなどないでしょう」

 と返した。


 敬子は病室の窓の外に見える白梅を見て微笑むのであった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「おめでとうございます!元気な男の子と女の子の双子の赤ちゃんですよ!」

 助産婦からそう告げられた有紀は、小さな二つの命を手渡され、安堵や慈しみ、そして幸せを感じていた。


「有紀! ありがとう! 陣痛が来てからほんとうに長い時間大変だったね。 でもこんなかわいい双子を……本当にありがとう」


「元紀くん、ずっと私を励ましてくれて、背中を擦ってくれてありがとう」


「お父さん、写真を撮られますか?」

 助産婦に促されて父親になったばかりの川上元紀はシャッターを3度切った。


「それではすみませんが、お父さんにはまた明日来ていただきますからね。ちょっと残念でしょうけど安心してお任せください」


「あ、はい。有紀と、この子たちをお願いします」

 元紀は名残惜しそうに、


「また後で会おうな。双子ちゃんたち」

 と右手を挙げて、分娩室から出て行った。


 有紀は、双子を抱いたまま、


「こんにちは。私があなたたちのママですよ。さっきのはパパ」

 と目を細めて言った。


「あなたたちの名前は、もう決めているの。あなたのおじいちゃんおばあちゃんとパパ、それから慎一さんのお母様全員で決めたのよ」

 有紀のいつの間にか涙が頬を伝っていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

元紀は家に帰り、双子を迎え入れるベッドの側に膝まづいて、


「慎一さん、あの日オレの背中を押してくれてありがとうございました。有紀と結婚して子供がいっぺんに二人もできましたよ。オレ、絶対に有紀を幸せにしますから。そして慎一さんの事、ずっと忘れません」

 と感謝の独り言を言った。


 声に反応したのか、飼っているネコが―― 黒くて小さな猫だ ―― 近寄ってきた。


「ああ、ロク。ご飯がまだだったな。ごめんよ、すぐ用意するからな」

 元紀はそう言うと、キャットフードを取り出して皿に取り分けた。


「二週間もすれば、ここもにぎやかになるぞ、ロク」

 元紀はロクに話しかけながら頭を撫でている。


「有紀と、双子の『慎一』と『咲』がここに戻ってくるからな」


(ようやく生まれ変わった慎一とサキにここで会えるんじゃな)

 秋の夕日に照らされた元紀とロクの影は、長くそして強いコントラストを描いていた。

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