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生まれ変わり --Renato リナート--  作者: Tohna
第6章 Realm of the dead(黄泉の国へ)
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第65話 上等な虫ケラ

「やーたーがーらーすぅー!!」

 端正な顔からは想像もつかぬような形相で忽那は八咫烏に迫ってきた。


「おい、忽那えらい元気じゃねえか」

「てっきりやっつけたのかと思っておったわい!」

 忽那が姿を現した時、慎一とロクが口々に言った。


「カラスさん、ずいぶん痛んでいるわ。今瑠璃光を当てるから」

 サキはすかさず瑠璃光を八咫烏に向かって放った。


「一日に何回サキにお世話になってるんだろうな。俺は」

 八咫烏は少し微笑みながら瑠璃光を浴びている。


「いいから黙ってて。治らないわよ!?」

 慎一は忽那の前に立ちはだかった。


「忽那、お前の相手はオレだ。かかってこいよ」

 慎一は忽那を挑発する。


 もちろんブラフだ。特段、勝算があるわけではない。あくまでも八咫烏の治療の為の時間稼ぎに過ぎない。しかし、打てる手は全て打つべきであろう。忽那は謂わば王者で、慎一たちは挑戦者に過ぎないのだ。


「どちらにせよ貴様も始末する。順番はどうでも良い」忽那はニヒルに笑って闘騰気を打つ構えをした。驚いたことに、先ほどに比べて格段にモーションは小振りで素早かった。

 既に闘騰気は放たれていて、慎一の顔を掠めて大講堂の壁にぶつかり、派手に弾けた。慎一は自分の頬が少し焼かれて気がついたほどだ。


「おいおい、今のはやばかったんじゃねえか?」

 クイックモーションで闘騰気を撃つ事など想定にはなかった。


 では、忽那は闘騰気を何故外したのか?


 クイックモーションで撃つ事は忽那にとっても馴染んだ動作ではない。威力も、コントロールもイマイチだったわけだ。


「貴様、今度は抜かりなく当てるぞ」

 これはおそらく単なる忽那のハッタリではなさそうだ。


 《集中しろ。集中しろ。奴の呼吸が感じられるまで集中するんだ!》


 慎一は目を瞑り、気の流れ、呼吸を読んでいる。忽那はお構いなしにさらに素早いモーションで闘騰気を再度放った。


 早く、強く、正確なベストショットだった。流石、地獄で「隠棲(いんせい)✴︎無双」の二つ名を得ているだけある。忽那の修正能力はピカイチだ。


「風戸慎一、貴様はこれで地獄送りだ」

 闘騰気の着弾を確信して忽那は独り言ちた。


 しかし、闘騰気は慎一には当たらなかった。気と呼吸を読み切った慎一は、五法具の一つ、輪宝を投じていた。

 

 輪宝は高速で回転する輪状の武器である。八岐大蛇との戦いでも、蛇頭の一つを切り裂いた。

 

 輪宝は、熱源体である闘騰気にも有効で、闘騰気をなんと霧散させてしまった。

 

 しかし、輪宝も同時に粉々になり、手元には戻らなかった。


「少しはやる様だな」

 忽那も慎一の短い間での進化には一定の注意を払わざるを得ないと判断したようだ。


「強いアンタにそう言ってもらえるのは光栄な事だね」


「勘違いするな。貴様など虫ケラだと思っていたが、上等なム虫ケラと思い直しただけにすぎん!」


 《しかし輪宝を失った。どうするかな。…そうだ!》


「ロク!済まんがちょっと忽那の相手をしていてくれ!」


「何をふざけた事を抜かしておる!?」


「自慢の爪で切り刻んでくれよ」

 慎一はそう言い残してとっとと退いた。


「なんだ、今度は薄汚え老いぼれが出てきたな」

 ロクはお世辞にも人格者ではない。


 むしろショートテンパー(瞬間湯沸器)である。今の一言でロクにスイッチが入った。


「ただの田舎の狼藉者の分際で、このワシをよくも愚弄してくれるのぅ。お主、タダでは済まさぬぞ?」


「どうしてくれるか生温い目で見守ってやるよ。いつでもどこからでもかかって来い。裏切り者め!」


 ロクは忽那に向かって飛びかかった。

✴︎隠棲【いんせい】 孤独、孤高な様子

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