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生まれ変わり --Renato リナート--  作者: Tohna
第4章 Development(自己開発)
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第36話 共同作戦

 九尾の狐の投げつけた尻尾は鋭く尖った鋼と変わり、サキを襲った。サキの身体を貫き、壁に磔にした。


 その姿に軍荼利明王となった慎一と化け猫と化したロクは戦慄し言葉を失った。


「私を甘く見たわね」

 九尾の狐は二人を横目で見やりながら不敵にほくそ笑んだ。

 歪んだ口元からは鋭く尖った犬歯のような歯が見える。


「サキっ!」

 慎一は磔となったサキに近寄り、鋼の尻尾を抜こうとした。


「お前も喰らうが良い!」

 九尾の狐はもう一本、尻尾を抜いて投げつけた。


「キーン!」

 金属音がして鋼の尻尾は床に落ちた。

 ロクが爪で叩き落としたのだ。


「くたばり損ないの化け猫か。良い度胸ね」


「口の減らぬ女狐め。お前は既に九尾の狐ではないな。七尾の狐か。ハハハ!」


「つまらぬ事を抜かすな。閻魔様に背いて生き延びたものなど無いのだぞ。お前はこの玉藻前様が料理してくれるわ。」


 慎一はなんとかサキから鋼の尻尾を抜き取り、サキの身体を抱きかかえた。


「サキ、お前だけこんな酷い目ばかりに…」

 サキは目が霞み、意識も混濁としている。


「し、シン兄…わたしだけ弱くてごめんね」


「もう喋るな。俺がなんとか助けてやる」


「ありがとう…シンに…」


 振り返るとロクも鋼の尻尾で磔にされている。


「もうお前だけだ。神妙にせよ」

 と尻尾が六本に減った元九尾の狐は、さらにもう一本抜き、慎一に目掛けて投げつけた。


 慎一は、


「オン キラキラ バザラ ウン ハッタ!(金剛よ、清め給え、祓いたまえ)」

 と金剛軍荼利真言を唱え、鋼の尻尾もろとも狐を吹き飛ばした。


「ぐぐぅう」

 肩で息をする狐。


 すぐさま慎一はロクに刺さった鋼の尻尾を取り除く。


「ふぅ、痛かったわい。礼を言うぞ」


「礼なんかいいからアイツにトドメを刺すぞ!」


「分かったわい!」


「喰らうがよい!性悪女狐め!」

 ロクが鉄の爪を突き立てると、狐は火に包まれ、あっという間に煙となって消えた。

 

 その後には、変化前の玉藻前が着ていた着物の上に狐の骸が遺された。


「オン アミリティ ウン ハッタ!!」

 慎一が甘露軍荼利真言を唱えると骸も着物も霧散した。


「サキ!大丈夫か?」

 慎一は軍荼利明王から元紀の姿に戻りサキに駆け寄った。

 

ロクも化け猫の姿を解き、猫に戻った。


「シン兄、あそこにある鏡を取ってきてくれる?」

 息が荒く、表情が虚ろなサキは絞り出すような声を出して慎一に壁にかかった鏡を取りに行くよう願い出た。


「私が瑠璃光を出すから、それを鏡で私に当てて」

 瑠璃光は自分には当てる事が出来ないらしい。

 慎一は言われた通りに瑠璃光を鏡で反射させ、サキの体に当てた。


 サキはみるみるうちに復活し、ロクの身体にも瑠璃光を当てて体に開いた穴を塞いだ。


 ロクとサキが磔になった穴も瑠璃光で塞ぐ事が出来た。


(君の名を聞いていなかったな)

 慎一は意識の下に閉じ込めていた元紀に問いかけた。

 

 元紀は、


(川上元紀です)

 と短く答えた。

 

慎一は再び元紀の体から出てロクに口伝えをお願いした。


「怖かったかい?」

 猫が話しているのを奇妙に思いながら元紀は、


「風戸さんの意識の下にいたので痛みは感じなかったし、風戸さんが負けるような気がしませんでしたから怖くなかったです」

 と答えた。


「なあ、元紀君。さっきの頼みなんだが」


「僕に乗り移る話ですよね?」


「ああ、なんとか協力してくれないか?」


「それしか見守る方法はないと?」


「そうみたいだね」


「じゃあ、やってみましょう」

 ロクは二人のやりとりを見ながら、


「お前達二人はどうやら相性が良いようじゃな。ワシの心配は杞憂じゃったな」

 と言った。


 ロクは、慎一が元紀に受け入れてもらえず憑依がうまくいかない事を心配していたのだった。


「シン兄、良かったね」


「ああ。助かるぜ」

 やがて山崎が入ってきて、


「モトキ。時間だ?休めたか?」


「はい、隊長!ご心配をかけました!」

 元に戻った元紀を確認して、山崎は目を細めた。

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