第23話 不義
「な、なんでパパとママとあの男が一緒にいるの・・?」
自分を愛してくれている両親がそこにいて、自分の命を奪った憎き相手がそこにいる。
「まさかパパとママの命まで奪おうとしているのかも。」
「どうしたんだ、まさか、あの男がお前を・・」
「そうなの。でも何で・・」
サキの父、祐輔と母、未知瑠は医師にサキが臨終したこと、病院に搬送された前後の経緯など事細かに話しているのを聴いていた。
未知瑠はサキの亡骸に覆いかぶさり、慟哭している。
まもなく、警察が到着するということで、一旦祐輔と未知瑠は待合室に行くように促された。
集中治療室を祐輔と未知瑠が出るとすぐに、例の男・・名を雄島と祐輔が接触した。
「那須野さぁん、打ち合わせどおりに、やりましたよぉ。イヒヒヒヒ」
祐輔の表情は硬いままだがそれでも雄島に聞かねばならない事を聞いた。
「こ、これで会社は救われるんだな?そうなんだな?」
「まあ、そういうことですよねぇ。でもすぐに警察がくるんですよね。さあ、私が犯人としてつかまってしまったら、あなたたちも保険金詐欺で捕まりますよぉ。ヒィーヒヒヒヒ!」
雄島は気持ち悪い笑い声を上げている。
サキは大きな衝撃を受けた。
両親がサキを保険金詐欺で雄島に殺害を依頼、否、この感じからすると雄島は祐輔の会社の借入先の関係者で、このことを持ちかけられたのだろう。
どの道ろくな相手ではない。
「パパとママが私を殺させたなんて!信じたくない!」
サキはそのまま病院の外に出て行ってしまった。
雄島も通用口から外に出た。
その場に残されたのは祐輔、未知瑠の那須野夫妻と、慎一とロクだった。
「わしが話そう。ワシしかこの二人にワシらの気持ちや考えは伝えられぬ。」
「そうか。サキの無念を伝えてくれ。」
那須野夫妻の目の前に、突然全長2メートルほどの化け猫が現れた。
「うぬらがサキの両親か?」
どすの利いた声でロクが訊いた。
「ひっ、ひぃいぃぃいい!な、な、なんだお前は!」
祐輔は尻もちをついて後ずさりしながら絶叫している。
未知瑠は声も無くそこに佇んでいるだけだった。
「今お前らがあの男と話していたことは真実か?」
「い、いったいあんたは何者なんだ?」
「ワシは佐賀藩臣下、龍造寺又七郎が母、たつの飼い猫、又六郎よ。訳あってお前の娘、サキの霊魂と一緒にいる。答えによっては、容赦はせぬぞ。」
「あ、あ、あいつらに、吉祥会という暴力団が闇金で、私の会社の運転資金をそこから借りてしまったばかりに」
「金は、お前の娘の命よりも大切なのか?」
「私が、間違っていたっ! うぁぁぁあああ!」
「おい、女。お前はなぜ止めなかった?」
「あいつら、いずれにしてもサキを売り飛ばすつもりだったのよ!幼児の内臓を欲しがる金持ちがいるって!」
「サキは、お前らをどう思っていたか分かるか?」
二人は顔を見合わせてきょとんとしている。
「サキはあの男がここにいると知って、お前さんたちが殺されはしないかと心配して追ったんじゃ。それをお前らは・・・」
ロクは立ち上がり、鋭くとがった爪を振り上げた。