いつかの夢
俺たちの町はすべてが淀んでいた。
いつ作られたかもわからないコンクリートの壁で作られた簡素な小屋で、
俺たちは生活していた。
畑を作る知識も水も、そもそも種すらなかった。
外部の町からもたらされる食物だけが命綱、
代わりに町で取れる鉱石を渡し、
物々交換で成り立っていた。
そんなある日、町の鉱山から鉱石が日に日に少なくなり、
そして一切取れなくなった。
隣町の奴等も既にこの町に来なくなっていた。
町からどんどん人が去っていく。
とどまっている意味がない。
食材すらもう尽きていた。
だが、俺の家には動けない家族がいた。
一人息子だったことが本当に幸いだったが、
両親共にすでに鉱山で発生した爆発の餌食になり、
母は両足、父は右足右手がなかった。
そんな両親にもう自分たちを捨てろ。と言われ、
見捨てるしかなかったのだ。
少しの食料を持ち、町を出て、他の町を転々としていった。
他の町にも既に食料などが取れなくなっていたのだ。
もちろん優しい町などでは残り少ない食料を分けてもらえたりもしたが、
多くの町ではそもそも入れてくれさえしなかった。
そんなある日、鉱山のような場所を見つけた。
扉があり、中に入ると明るく、鉄の板でできた壁をよく見るとそこには収納棚があり、
開けてみると1人分の食料がたくさんあった。
他の部屋を探すと、そこからは何らかの資料がたくさん出てきた。
がんばってそこに書いてある言語を解読し、なんとなく何が書いてあるかがわかるようになったある日、
誰かが外の扉を開いた。
何日間も忘れた頃に誰かが侵入してくるなど初めてだったのでとても驚いていた。
そんな中入ってきたのは俺と同じくらいの年齢のガキだった。
彼はもう既に限界であったが、食料を与えると元気になった。
彼は文字が読め、今まで解読していた文章の意味を教えてくれた。
今までやっていたことは一体なんだったのか・・・
とりあえず、彼に文字を教わり、資料を解読していき、
結果私はこの施設がある研究に使われていたことがわかった。
しかしいつの日か研究が凍結され、施設も封じ込められてしまった。
しかし内部の電源設備自体は半永久的に動き続けていたため、
照明などから実験設備の一部もまだ使えるらしかった。
ある日、気づいてしまった。
食料が尽きかけている。
そして彼と私は実験室へ向かった。
実験室には透明なカプセルがあり、そこに入り込んで動作を開始すると、中にいる生物を冷凍状態にし、強制的に体の成長および老化を遅れさせるものらしいが、
この装置は改良されており、まったく老化、成長を止める分、なんらかの危険がある可能性があるらしい。
私たちに選択する時間はもうなかった。
私たちはこの装置に未来をかけるのだ。