[三章-11:能力擬似発動装置]
思わぬ一撃に腹を押さえて二、三歩後退する悠一は、
「馬鹿な、首への一撃だぞ……」
と口に出す。断剣は鳩尾への追撃をしながら
「刃が付いていれば確実に死んでいたが、そんな生温い一撃に俺が倒れるとでも?言ったろ“後悔するなよ”って」
と言う。悠一は痛みに耐えきれず後ろに倒れこもうとする。しかしそれは断剣が許さず後ろに回り込み首元に肘打ちを決める。今度は前によろめいている悠一に両手を打ち付け、地面に叩きつける。
(馬鹿な、あの有利な状況からここまで追い込まれるなんて…)
「どうして…」
思わず疑問の声がでる。
戦闘中ずっと腰につけて持っていたらしきダガーを抜き、首に押さえつけながら断剣が
「あれが本当の剣ならやばかったし、あの一撃を耐えられるような奴はそうそういないだろうが…相手が悪い。なかなか、楽しかったぞ……名前は…そうだ、最期に名前ぐらい教えろよ」
と言う。悠一の視界はほとんど断剣に奪われていた。
(視界がほとんどあいつに奪われて、空間転移が使えない……。何とかして考える時間を………)
「殺せば証拠が残って確実にお前は捕まるのにここで殺す気か?」
「能力擬似発動装置って知ってるか?」
———能力擬似発動装置
現在研究段階にある、能力を能力者以外がその装置を使って能力を利用できる装置。装置の複雑さ、求められる精密さなどが非常に高く現段階で量産型できず値段が非常に高く買える人も限られているため一時期有名になったきり使う人はおろかそれを知っている人も少ない。
「それの違法版最高階級、擬能・存在消去がここにある。もう意味はわかるだろう?お前が死んだことが見つからないどころか、お前が存在した事実すら失われるのだよ」
と機械を弄びながら言う。
———存在消去
影響系最強能力
この能力を受けると過去にも影響して、存在した事実が消去されてしまう。消された人がしたことは誰のほとんど記憶に残らず、誰かがしてくれた程度の記憶にしかならない。ただ対象に直接干渉を行うので、無効権が発動する。発動速度が遅く、無効権耐性がほとんどないので、意識がない相手や既に死んだ相手にしか影響できない。存在を消された人の中でも、生きている人がそれを受けた場合、その人は全ての人間から存在を認識されなくなる。そして、人間に存在を認識されかねない行動は全て能力によって、規制される。なので、人に影響が出ないようにする以外に生きる道はない。ちなみにこの能力を持つ人間は少ない。
———無効権
人に直接干渉をする能力の発動には0.5秒〜15秒程度の発動時間がかかる。その間にその能力を弾こうと意識することで発動を無効にできる力のこと。全ての人が基本的にこの力を持っていて、能力の発動対象になったことによる違和感を感じることができる。
「それを使うことでバレないと言うわけか」
と言う悠一に対して、断剣は大きく笑いながら
「はっはっは、全くその通りだ。時間がないそろそろ終わらせようか」
悠一は無言になる。断剣の持つダガーが悠一の首めがけて振り下ろされる。




