[一章-27:倉庫での出会い《Warehouse》]
悲鳴の聞こえた方向に走って行くと、いかにもここだと言わんばかりに怪しい倉庫を見つける。扉が開けっぱなしになっていることが怪しさを2倍増しにしている。中を覗き込むと……嫌がる小柄な女性が1人とそれを囲む男が3人いる。もし嫌がっているのが女性じゃなかったらデジャブを感じたことだろう。止めるために中へ入る一馬。倉庫は立て付けの悪そうな棚がいくつかあるが、ほとんど荷物が置かれていないことから使われていないと予想する。
「やめとけよ、嫌がっているのが見えないのか?」
と尋ねる一馬。一瞬男達は一馬がここを見つけたことに驚いたようだったがすぐに
「今逃げたら何もしないぜ、ヒーローさん」
と言い笑う男達。それを聞いた一馬は、
「今やめたら痛い目に合わなくて済むぜ」
と台詞はヒーローを気取りながらも顔は賄賂を貰う役人さながらの笑顔。その言葉が男の1人の癇に障ったようで
「黙れこらぁ!」
と怒り、突撃してくる男。その手には折れた鉄パイプが握られている。他の男はそれを見て、やっちまえーとベタな台詞を吐いている。
一馬の頭目掛けて、鉄パイプが振り下ろされる。しかしそれは腕によって防がれる。一馬は痛みで少し顔が歪む。しかし、鉄パイプの方が大きく歪んでいる。
「……はっ…?なんでだよ」
と驚く男。すると他の2人が一斉に襲いかかる。パンチがとどく数ミリ手前で一馬は片方の男にスライディングして倒す。2人の男は勢い余ってぶつかり合う。
「くそ、やりやがったなこの野郎!」
と怒りを口にする男。
「えっ…まだやるの?これ以上やるとあんたら危ないよ?」
と馬鹿にしながら尋ねる一馬。それを聞きさらに怒る男達。
「馬鹿にしやがってー!」
と怒りに任せ殴りかかる3人。それを一馬はしゃがんで躱すと、3人はまたぶつかり合う。
「当たらないって、そんな攻撃」
とさらに怒りを買うような一馬の言葉。1人がまた鉄パイプを掴み襲いかかる。しかし振りかぶるっている間に男の手を手刀で叩く、男の手から鉄パイプが解放される。鉄パイプが地面に落ちるとほぼ同時に男の鳩尾に肘を入れる一馬。
「がっ……こいつ……やべぇ」
と言い倒れこむ男。3人で襲いかかって傷1つ与えられない相手に
「覚えてろよ!」
とベタな台詞も吐くのも忘れ逃げ出す男達。途中から置いてけぼりにされていた女性は、
「助けていただきありがとうございます。この恩はなんとしてでも」
と感謝の気持ちを口にする。
「いえ、大丈夫だよ、これぐらい」
と答える、
「……でも能力使ってませんでした?大丈夫ですか?」
と聞いてくる女性。これには驚きを隠せない一馬。
(確かに能力を使っていたが、バングルをつけていたためバレることはないはずだが動き的に読めるとすれば……)
「…まさか…能力者?」
と考えの一部が口に出る一馬。
「はい…あの…私は月見莉奈と言います。あなたは?」
「俺は斉藤一馬だ」
と答える。すると一馬はポケットに振動を感じてスマホを取り出すと太樹から電話がかかってきている。
「もしもし、どうした?」
「もしもしアニキ…すいません負けてしまいました」
と上司に失態を謝る部下のように話す太樹。
すると声の主が変わる。
「おい、一馬どこに行っているんだ早く来い!遊がうずうずしているんだよ」
と一馬を呼び出す響也。
「ごめん、今から行くわ」
と答えて通話を切る。
「ごめん、もう少し話したかったけど連れが呼んでいるみたいで」
と言いながら倉庫を後にする一馬。一馬が走り去るのを見届けた後、莉奈は
「斉藤一馬……これは…予知できなかった……」
と呟く。




