魔王ちゃんVS積み木
ここは由緒正しい魔王城である。
人里離れた崖の上に建っている。尖っている。黒い。と、魔王城たる条件をほぼ満たしていた。
そんなお城の最上階に、魔王ちゃんは居た。
「ふんすっ」
吐息が鼻から漏れた。今、彼女の手には三角形の積み木が握られている。
現在『私の考えた理想の魔王城』の建築中であった。沢山の塔に屋根(三角形)を乗せるという極めて難易度の高い作業に差し掛かっていた。
決して暇だから積み木で遊んでいるのではない。
勇者が来ないから仕方なく、今やるべき作業を真面目に検討した結果、積み木でお城を作っているのだ。
魔王ちゃんはこう見えて意外と忙しい。先日父親の後を継いだばかりだからだ。
まだ若輩者なので、良く食べ、よく眠り、良く学び、健やかなる成長を遂げる必要がある。
もちろん、就任したからには広く国民へ魔王アピールを行わなければならない。愛用しているワンピースの胸には『魔王』『NEW』の文字が躍っており、実に分かりやすい。これ以上の魔王アピールはこの世に存在しないであろう。
話を再び積み木に戻そう。
地道に続けられた作業は既にクライマックスを迎えつつあった。大胆かつ繊細に…それでいてアグレッシブに…!魔王ちゃんの作業は着実に進んでいく。
残すは最も高い塔…背伸びして、ぎりぎり届くか届かないかの最難関であった。
意を決してそびえ立つ巨塔へ挑む。流石の魔王ちゃんもその重圧に指先が震える…ここまで掛かった3時間半は無駄には出来ない!
「御免くださいっ!」
突然声を掛けられた魔王ちゃんの指先から真っ赤な二等辺三角形の積み木が滑り落ちた。
箱入り娘の魔王ちゃんは精神的な面がまだ絹ごし豆腐程の頑強さであった。
膝から崩れ落ちる魔王ちゃん。今日はもう体育座りで1日を過ごすしか無い。
魔王ちゃんの秘密
・メンタルが絹ごし豆腐