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ゴミ箱の中より

作者: 芳田

 拝啓

 春の陽気は雪の厳しさとは違って、すべての始まりを告げています。あなたはいかがお過ごしでしょうか。

 小生はこのごろ、片手間に書き散らした落書きが世間に受けたのでようやっと自分の稼ぎが生まれ、家族の風当たりが弱まった気がします。

 お噂では、あなたは主人を失い、また、人に騙され酷いことになっていると聞きました。もし小生の身体が壮健であったならば今すぐにでも千里を走る勢いであなたのもとへと行くのに、手紙という冷たいものでしかあなたに思いを伝えられないことを辛く思います。

 小生は知っての通り弱い人間でありますが、しかし、文筆だけは人より上だと自負しております。それは小生の自身過剰や驕りなどではなく、厳然たる事実に基づいて言っているのです。小生の作品を読んで、顔も合わせたことのない偉い人が褒めてくださいました。また、小生の作品は他の作家よりも多く売れました。これはつまり世間が小生を評価し、Aランクをつけたことと同義であるのです。

 少し前までは、このまま家の布団の中で丸くなったまま穀潰しと罵られ死んでいくのだと、独り言ちていた病人が、なんとなく書いて送った作品を見知らぬ人に絶賛されて、晴れて文壇への仲間入りを果たしたのです。

 ここまで読むとただの小生の自慢話かと思われるかもしれませんが、小生が申し上げたいのはそこではなく、世の中、どこに何があるかわからない、ということです。わからないから人は目を開けて道を歩くのです。人には不幸な時があるのは仕方がありません。しかし、どん底までいったら必ず、事は良い方向へ向かいます。

 だからどうか自分を大切になさってください。卑下するような真似はしないでください。自信をもって生きてください。辛く泣く日もあるでしょう。それでもいいのです。それを乗り越えてあなたはいつか立ち上がることが出来ます。そういうあなたを小生は愛していたのですから。

 ご自愛のほど、お祈りいたします。敬具











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