ロリコンとくまモン的な話(4)
「……で、ここでママに起こされたわけよー」
「愛理ちゃん……、その後、その後どうなったの?」
早苗が、真っ赤な顔をしながら、私を見ている。
「んー、起こされちゃったからなぁ」
「あ、でも、夢の中が麻衣ちゃんなんだから、麻衣ちゃんならわかるんじゃない?」
「え? 私?」
先ほどから、苦虫を噛みつぶしたような顔をして何かを考え込んでいた麻衣が顔を上げる。
「じゃあ、麻衣先生の意見を伺いましょうか」
私と早苗が麻衣を見つめた。
「んーー、ドキドキしながらずっと聞いてたんだけどさー。途中で話終わっちゃって、歯がゆいというか、続きがすごく気になるよね、確かに」
「うんうん! 麻衣ちゃんも気になるよねっ」
興奮のためか、早苗の鼻息が荒い。
まあ、何を妄想しているか、察っしがつくけど。
それにしても、あの全否定マンセーの麻衣が、途中何のツッコミもせずに話にのめり込むって、今回の話がそれだけ面白かったって事かな。
「で、どう思うのよ、麻衣」
「んー、多分だけど、くまモンは、結局電車に間に合わなかったんじゃない?」
「え?」
「は?」
当然の反応だよね。
何このウルトラハイパー変化球的な答えは?
「あっ! それか、くまモンが線路に侵入して引かれちゃうとか! や、それは流石にないか……」
「ごめん、流石に麻衣が何言ってるか、さっぱりだし」
「だからぁ、要するに、何処でくまモンが乗り込んでくるかドキドキって話でしょ?」
「麻衣ちゃん……」
絶望に打ちひしがれている感じの早苗。
「……麻衣、くまモンとか一切出てないし」
「いや、だってさ、『遠くでゆっくりと追いかけてくる白いくまモン。』ってくだりが最初にあったじゃん」
私のツッコミに、手を振りながら、麻衣。
「あのさ、麻衣」
私は、これ以上すると肺がぺちゃんこになるんじゃないかってぐらいの盛大なため息をつくと、改めて麻衣を見た。
「む?」
「うん、ごめん。……確かにそう書いてあるわ。でも、それは作者の誤変換で、本題じゃないの」
「えー、なにそれ? じゃあ、くまモンはどうなるのさ」
「えー、じゃないし。……とにかく、まず、くまモンから離れようね。前後の意味から解りそうなものだけど、そこは『雲』だからっ。白いくまモンなんていないし、くまモン関係ないから!」
「なんだよー、じゃあ、他にどんなドキドキが含まれてるんだよ! この話にはっ! 私のドキドキ返せよ!」
「いや、逆ギレされましても……。むしろ怒りたいのこっちだし」
突然麻衣は、バンっと机を叩くと、立ち上がった。
「とにかくっ! ロリコンのおっさんが小学生とキスしたかどうかなんて、どうでもいいんだよ! どうせ逮捕だよ! 児童ポイント倍増違反だよ! とりあえず死刑だよ!」
「ちょっ! 麻依っ! 声大きいって! あと、何か混ざってるし」
クラス中の子が、何事かと私たちの方を見る。
……ああ、何時ものパターン。
しかも、恥ずかしさ当社比3倍!
「とにかくっ! ロリコンの結末じゃなく、くまモンの結末示せよ! なんでもいいから書き述べろよ! くまモンだよ! ロリコンじゃなくてくまモン出せよっ!」
「ちょっ! 麻衣っ! だからっ! 大声で変なこと言わないでよっ!」
私は、慌てて立ち上がると、クラスの注目を浴びながら、まだ怒りが収まらない感じの麻衣を、早苗と二人がかりで教室の外に連れ出した。




