ファミレス的な話
ファミレスって良いよね。
だって、すっごくたくさんのメニューがあって、
1日中メニュー見てても飽きないって感じ。
何かわくわくするし。
でも、私はなかなか食べるものを決められ無くって、
いつもママに怒られるけど。
今日は、家族でファミレスに来てるんだ。
でもね、まだ席には着いていない。
日曜日ってのもあって、混んでるみたいで、
さっきパパが紙に名前を書いていた。
私の家族が呼ばれるのは5組目かな。
「佐藤」って人と、「音野」って人と、
「高松」って人と、「ご主人」って人の後に、
「上山・4名、禁煙」って書いてある。
あれ? でも、最後のは名前なんだろうか。
まあ、いっか。
ファミレスに来ると、いつも不思議に思うことがある。
レジの前に、今日は5組待っていて、
もっと混む日だと凄い人なんだけど、
店内を覗いてみると、満席じゃないんだよね。
今日も半分ぐらいのテーブルしか埋まって無くて、
でも、空いている席は、コップとか、食べかけのご飯とかが
置きっぱなしになってる。
カドウリツって言うの? それで言うと、半分ぐらいかな。
さっさと片付けて、どんどん客を回転させた方が
ここの売り上げも上がると思うのに。
何でそうしないんだろう。
って事を、この間お姉ちゃんに言ったら
「愛理ってば、難しい事知ってるのね~。えらいえらい」
ってほめられちゃった。
あとさ、ぴんぽ~んって鳴るやつあるじゃん。
あれって、1回鳴らしても店員さん来ないことあるよね。
「は~い。ただいま参ります~」って返事は聞こえるんだけど、
来なくって、「もう、遅いな!」ってパパはボタンを連打するんだ。
連打すると、早く来てくれるのかどうか解らないけど。
家に帰って辞書を引いてみたら「ただいま」ってのは
いつも家に帰ってきたら私が言う言葉じゃなくて、
「すぐに」って意味みたいなんだけど、
すぐには来てくれないのは何でだろう。
実は、順番待ちで、他のお客さんの所に行ってるのかな。
だったら、
「は~い。佐藤様と音野様と高松様とご主人様の
テーブルの後に参ります~」みたいな感じで言えば、
パパもあんなにイライラせずに待ってると思うんだ。
すぐに来られないのに「ただ今」っておかしいよね。
それとも、あれかな、パパがよく言う「大人の事情」
ってやつなのかな。
だとすると、私には到底解らないって事だね。
だって、私は小学生だし。
そうそう、入り口のすぐ脇だから、
順番待ちの人がすごく並んでるのが解る。
『満席のためお名前を書いてお待ちください』って書いてある
看板を見ながら「早めに来て正解だったな」とか、
パパとママが囁いている。
うんうん、よかった。
店内はやっぱり、「満席」じゃないけど。
そして、いよいよ私達の名前が呼ばれ、席に着いて、
パパがボタンを連打していると、テーブルの所に
女の店員さんがやってきたよ。
腰に刀とかさしてない、普通のお姉さん。
「ご注文をお伺いします」
しばらく待っていたおかげで、もう何食べるか決まってるし、
今日は私はママに怒られずに済みそう。
そっか、もしかしたら、私みたいな子がいることを考えて、
考える時間を与えるために、ぴんぽん1回で来ないのかも。
ココロヅカイってやつかな。
「えっと、僕はがっつりハンバーグディッシュ、ライス大盛りで」
パパは、いつも大盛りを頼むね。
てか、凄く沢山食べるかな。
家ではいつも「腹減った~」って言ってるし。
「私は、チキン南蛮定食で」
お姉ちゃんは、いつもチキン南蛮をたのむ。
鳥が好きみたい。
飼ってないけど。
「愛理はもう決まってる?」
ママが私を見た。
私はすかさず頷くと、店員さんを見上げる。
「えっと、ベーコンとポテトのピザセットください」
あっ、「ください」じゃなくって、「です」って言えば良かったかな。
店員さんは、ボタンをピッピッと押すと、私を見た。
「サラダのドレッシングは、和風と中華とございますが?」
え?
……そっか、セットにサラダが付いているからか。
って、しまった! ドレッシングまで決めてなかった。
う~ん。
視線を感じて顔を上げると、ママがこっちを見てる。
「ちゅっ、中華でっ!」
……あせって大声上げちゃった。
ていうか、デフォルト設定を決めておいてほしいな。
10秒以内に回答しないと、デフォで和風になります、とか。
店員さんが微笑みながら、ボタンを操作すると、ママを見た。
「カツとじ定食で」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
私を含む、みんなが頷くと、店員さんは再びボタンを操作する。
「ご注文を繰り返させていただきます」
ここで一息。
「がっつりハンバーグディッシュがお1つ、
カツとじ定食がお1つ、
チキン南蛮定食がお1つ、
ベーコンとポテトのピザがお1つ。
中華ドレッシングがお1つ、
ライス大盛りがお1つ。
……以上でよろしかったでしょうか」
「はい」
パパが返事をすると、店員さんは「メニューを下げさせていただきます」
ってメニューを持って店の奥に消えていった。
いやいや、パパは絶対聞いていない。
適当に返事していたに違いない。
私的には「中華ドレッシングがお1つ、大盛りがお1つ」
ってのがよく解らなかったけど、まあ、大人がやってるんだし大丈夫でしょ。
『3名でお待ちの、き様~。き様~、お席がご用意出来ましたのでご案内します~』
「き」って、珍しい名字だな。
もしかして、中国や韓国とかの人かな。
それにしても、今日は珍しい名前の人が多いな~。
海外の人が観光に来てるのかも。




