ロリコンとくまモン的な話(3)
「あ、……や、まあ、色々事情があるだろうし、学校って決めつけちゃいけないよね、うん」
僕は、慌てて取り繕う。
全身から、汗が噴き出す。
すると、女の子は、いたずらっぽい笑みを浮かべながら、僕を見上げた。
「おにいちゃんは、会社に行くんじゃないの?」
「!」
多分、ポーカーフェースに失敗した感じ。
女の子はクスクスと笑った。
「ふふ、冗談。これでおあいこだよ」
何なんだろう、こんな小さな子に遊ばれている自分って。
ただ、このやり取りではっきりしたことは、女の子は何らかの事情で学校へ行きたくないのだという事。
たぶん、いじめ的な問題なのだろう。
「うん、おあいこだね」
なんとなく、今は自然に笑えた気がする。
タタン、タタン……
タタン、タタン……
「ねぇ、おにいちゃん」
「うん?」
「おにいちゃんってさ、オトナなんだよね?」
女の子は少し身体を寄せてきた。
「え、……うん、まあ、そうかな」
慌てて、少し身体をずらし、距離を取る。
「私、色々知りたいんだ。オトナの事」
再び身体を寄せる女の子。
「や、そ、そうなんだ」
再び離れようとしたが、左腕にひんやりした感覚。
残念ながら席の端だ。
タタン、タタン……
タタン、タタン……
「ねぇ、おにいちゃん」
「……う、うん」
「キスしたことある?」
「!」
タタン、タタン……
タタン、タタン……
――ちょっ!
……え?
……いやいやいやいや、何この展開?
僕は、多分、ギギィって音がするんじゃないかという感じで、女の子を見下ろした。
――!
女の子は僕を見上げ、返事を待っている感じ。
タタン、タタン……
タタン、タタン……
落ち着け!
相手は小学生だ。
多分、興味本意で聞いているだけだ。
このぐらいの子は、大人の世界に興味を持つって何処かの本で読んだことがある。
……あれ?
てことは、大人なのに、キスもしたことない僕って、おかしいのかな?
タタン、タタン……
タタン、タタン……
「えっと……」
何か、この場を切り抜ける、上手い言葉を!
「はい、あと1回~」
女の子が、嬉しそうに言った。
……え?
あと1回って、何が?
タタン、タタン……
タタン、タタン……
「もしかして、キスしたことないの?」
女の子が僕の顔をのぞき込む。
焦りで、僕の鼓動が高鳴る。
タタン、タタン……
「えっと……」
あかん、何も思い浮かばない!
「ぶぶーっ! はい、罰ゲームだよ」
女の子は、ランドセルを脇に置いた。
タタン、タタン……
「ば、罰ゲーム?」
動悸がし、めまいを催す。
「そ、さっき言ったじゃん。あと2回『えっと』って言ったら罰ゲームねって」
「あーー!」
確かに言ってたわ、そんなこと。
タタン、タタン……
「はい、おにいちゃん。こっち向いて」
「え?」
なに?
ここに来て、この展開の速さは?
「え、じゃないよー、ほらっ、早く」
タタン、タタン……
「えっと……」
「はーやーくー、って、また言った~。じゃあ2回ね」
女の子はそう言うと、僕の方に向き直った。
「罰ゲームって、な何するの?」
「秘密」
タタン、タタン……
観念した僕は、女の子の方を向いた。
タタン、タタン……
女の子は笑みを浮かべると、両手を僕に差し伸べ、
僕の頬をつかんだ。
「逃げちゃだめだよ」
予想に反し、その手はやや冷たく、しっとりとしていた。
そのまま、僕はぐいと引き寄せられ……
……え?
タタン、タタン……
「私が、初めてになってあげる」
タタン、タタン……
――ちょっ!
……まさか!
タタン、タタン……
「ほら、心を解放して、一緒にダイブしよ」
女の子の顔が間近に迫る。
タタン、タタン……
――あかんて!
タタン、タタン……
これは、確実にアウトなやつや!
頭の中で、これから起こることを想像し、その後の事を考え、身体が痺れ出す。
タタン、タタン……
ふわっとした感触に包まれ……




