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ロリコンとくまモン的な話(1)

 タタン、タタン……

 タタン、タタン……


 僕は、ぼんやりと窓に視線を移す。

 遠くで、ゆっくりと追いかけてくる白いくまモン。

 その周りは、透き通るような青が何処までも続く空。

 今まで見たことがない景色を目で追いながら、僕は、何かを考えなけりゃと思いながらも、何も考えられずにいる。


 タタン、タタン……

 タタン、タタン……


「ふう……」

 ため息をついてみる。


 タタン、タタン……

 タタン、タタン……


 周りを見渡しても、僕以外の人はいない。

 それもそのはず。

 今は通勤時間で、僕が降りる街の中心部の駅は既に過ぎ、あらかたの乗客は降りてしまったのだから。

 一つ前……、いや、3つだっけな? とにかく、目の前に腰掛けていたお婆さんが降りてからは、この電車の乗客は僕だけになった。


 タタン、タタン……

 タタン、タタン……


「ふう……」

 再びため息を着いた時、不意に電車が減速を始めた。

〈ご乗車ありがとうございます。間も無く――〉

 不意に、ではなく、駅に着くから減速してるんだよ、と、僕は自分に突っ込む。


 やがて、電車が完全に停止し、独特の空気が漏れるような音と共にドアが開く。

 赤いランドセルを重そうに背負った女の子が入ってきた。

 その子と目が合ったので、慌てて目を逸らし、下を向く。

 足音が誰もいない車内を木霊する。

 こんな時間に、学校遅刻じゃないのか? まあ、僕も人の事言えないけど。

 などと思っていると、僕の視界に、水色の靴が現れ、ついで、すぐ脇が、ふわっと沈んだ。

「よっこい、しょっと」

 子供特有の少し高めの声。

 カチャリ、と、金属が触れ合うような小さな音がした。


 ……?


 右手を見ると、僕のすぐ隣に女の子がランドセルを抱えるような格好で座っていた。

 身体が触れるか触れないか、ギリギリの距離。

 鼓動が高鳴る。


 タタン、タタン……

 タタン、タタン……


 僕は対応に困り、意識を女の子から逸らすことに専念する。

 列車はガラ空き、というか、僕と女の子しかいない。

 その、ガラ空きの車内で、敢えて僕の隣に座る理由が解らない。

 斜め左を見ながら、僕は考える。


 タタン、タタン……

 タタン、タタン……


 落ち着け、特に理由はないはずだ。

 ほら、マジックセレクトってのがあるだろ?

 逆に誰も座って無いからこそ、人のいるところを選んだだけで。

 第一、知らない子だし、僕とは全く関連性がない。

 そうだ、だから、あと何駅かでこの子は降りて、その後は、何事もなかったかのように僕の日常が戻るんだ。


 ……あれ? 僕の日常って、何だ?

 会社をサボっている時点で、既に日常じゃないような……

 まあ、いいや。

 とにかく、関わらなければいい。

 この子にも他意は――

「やぁ、私は麻衣だよ。おにいちゃんは?」


 ――!


 タタン、タタン……

 タタン、タタン……



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