ハンバーガー的な話(1)
調子に乗って4話完結第3弾~
なんか、1話完結短編物って言っていたのに、趣旨どこ行ったのか……。
ということで、はじまりはじまり~
「おはよー、愛理ちゃん麻衣ちゃん」
教室の入り口で、早苗が手を振る。
「おはよー。珍しいね。3人同着なんて」
「ねーねー、愛、早苗、聞いてよ~。新しい挨拶を思いついたよ! もう、流行語大賞間違いなしだよっ」
ああ、なるほど。
早苗はともかく、麻衣がこんなに早いのは、それを披露したかったからなのか。
「麻衣ちゃん、新しい挨拶教えて~」
目を輝かせながら、早苗。
素直でいい子。将来はモテるに違いない。
「うーん、どうしよっかな~」
対して、将来残念な人生確定フラグの麻衣。
は? 自分で振っておいて、なんだよ、そのもったいぶりは。
「じゃあ、いいや。早苗、行こっ」
「あっ、愛理ちゃん……」
「ああっ、待ってくだせい! お代官様っ」
麻衣が私の裾をぐいっと引っ張る。
いや、危ないから伸びるから。
「っで、何だっけ」
「ふふふ、大うけ間違いなしだよ」
あれ? ネタの話だっけ?
「わくわく」
いや、早苗、そういうのは声に出さなくていいからね。
「まずー、左手をこうやって上げて~」
麻衣は、左手をこちらに向け、顔の高さまで上げる。
「おほん……、では」
私と早苗をちらりと見、満足げな笑みの麻衣。
引っ張るなぁ……
早苗がゴクリとつばを飲み込む中、愛理は、「時は満ちた」って感じで息を吸い込んだ。
「にゃんぱ――」
「はい、ストップ! それ、パクってるし。てか、まんまだし。何処かの田舎で、小1の子がやってるやつでしょ。完全にアウトだから、訴えられるから。炎上するから」
私は、慌てて麻衣の言葉を遮った。
「えー、違うし。今朝、顔洗っていたら、偶然思いついた新しい挨拶なんだけど、気に入らなかった?」
「麻衣、そんな事言ってると、何処かの国の自称アーティストで、明らかにパクった曲なのに、『似てるかも知れないけど、部屋でステップ踏んでたら偶然思いついたんだよ』とか、『もしパクるつもりなら逆にバレないように変えるはずじゃん』、だからパクリじゃないよとか苦しい言い訳するような、残念な大人になっちゃうよ?」
たしなめる私に、麻衣は不満げにため息をつく。
「えー、パクりって言うけどさぁ~、じゃあ、どこかの漫画雑誌でバスケット漫画が流行ったら、半年もたたないうちに、どの雑誌でも似たようなバスケット漫画が連載開始とか、医療物のドラマが流行ったら、どの局でも同じような医療ドラマ始まるとか、そういうのはどうなんだよっ!」
「いやー、そんなの知らないし。てか、それは、大人の事情ってやつじゃないの? 私まだ小学生だし、難しいこと聞かれても解らないよ」
「なんだよー、こういうときだけ小学生面かよ」
いやいやいや、面も何も小学生ですからっ。
「まあ、それはさておき、言いたかったのはそのことじゃないんだ」
ふっ、態勢が悪くなったから話題変換攻撃来たな。
「あのさー、うち、今修羅場中でさー、どうしようか悩んでいるんだ」
悩み? 何それ美味しいの的な表情で、麻衣。
今日は私の机に集合。
「また唐突だし、あと、全然悲壮感感じないけど、一応話を聞こうか」
「麻衣ちゃん、私で良ければ相談に乗るよ~」
早苗は本当にいい子だなぁ。
でも、すぐに世の中の厳しさってやつを知ることになるんだろうけどね。




