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教室内の悪魔っ娘

眠さが留まる事を知らない。

いいかい、少年。君はすでに人間じゃない、否、人間を超えた。つまりどーゆーことかわかるかっつーと、君は人間を超えちまった、否、この表現は正しくなかったな、やっぱ少年今の無し。――――そうさね、少年は人間から外れちまった。外れた道を、元の正しい道に誘導することは出来る、でも道を間違えちまったって事実は一生残るし、一生周りの人間から馬鹿にされる。そのことは理解できているね? いい返事だ。まあ、何が言いたいかって言うと、少年は、ある程度、人間から外れたものの見方をしときゃいいんだよ。その方が、他人から後で外されるよりもずっとましな結果になる。諦めがつくし予想がつくし心の準備が出来るからね。だからおんなじように、人とはちょっと違う連中を、一切合財受け入れてやれ。なーに、心配するな。少年なら出来るさ。お前さんは多くのものを背負ってる。今更百人や二百人増えたところでどうってことねーから。…………おいおいそんな怯えた顔すんなよ、虐めたくなっちまうじゃねえか。

     ◆

教室内の空気は、最悪と言っても過言ではなかった。学級崩壊を起こしていないだけましとでも言えそうな雰囲気である。いくらかは考慮していたとはいえ、ここまで酷いと言うのは流石に予想外と言うか、正直来なきゃよかったというか、学校明日から来たくなくなった。

理由は一目瞭然。人間と、人間の魔術師と、亜人や獣人、そして魔物の皆さん(妖怪含む)による派閥の形成だ。割合は、二対二対三対一くらい。教室が綺麗に三つに分かれて近付くなオーラを発している。メアリーなんて俺の後ろでそわそわしている。さっきそっと窺ってみた所、俺とのお友達関係が崩れるのが怖いそうだ。所詮損得だけの友達関係なのにな…………。

まあそれは冗談として。

派閥形成にいたった理由は大体予想がつく。

まずは人間、こいつらは単なる習性だ。人間、ちょっと人と違うところがあると、そこを(あげつら)って差別するものだ。それを区別だと言って、自分が悪いことをしていると言うことから眼をそむけ、正統性を示そうと言う馬鹿がいるが、結果が同じなら意味は同じだと気付け馬鹿と声を大にして言いたい。

そして次、亜人に獣人。まあ、こいつらは確かに仕方ないかもしれない、と一瞬だけ思ったがやはりおかしい。確かにこいつらは、結界で隠された隠れ里や、一族の誰かが使用していたであろう大禁呪・侵食☆領域の中に引き籠っていたのがほとんどだ。人間に見つかって乱獲されたり、奴隷として売られたりした奴らも多く、幾つもの彼らの居住地が滅ぼされたとも伝え聞く。だけどなお前ら、長い奴はここに十数年いたんだろ? いい加減人間に対して憎しみの視線浴びせかけるのやめろや。

そして問題のある最後の派閥、人間の魔術師共。こいつらが一番どうしようもない。何せ、先祖代々伝わってきたエリート精神がとんでもないことになっている。まあ良く言えば、誇り高い。悪く言えば、狭量、器が小さい、短気、一度挫折を経験すると、元に戻るまで時間がかかる、常に上から物を言ってくる、高圧的、鬱陶しい、言動が無性にいらっと来る、などなどだ。欠点が異常に多いが、ここは個人差もあるので自分で診て判断するべきだろう。

そして、派閥なのかそうでないのか非常に分かりづらい、魔物プラス妖怪組、こいつらはあれ、うん、基本的に人間を脅かす側の存在だから、こいつらを端から歯牙にもかけてない感じ。むしろ対立を煽ってる節がある、ある意味一番性質(たち)が悪いが、一番人畜無害なやつらだ。魔物なのに人畜無害とは、これいかに。

そして現在、俺は、否、俺とメアリーは、とある派閥に勧誘されていた。

――――そう魔物派である。

…………………………………………………………………………………………………………何故?

俺は女郎蜘蛛のお嬢さんに、糸で巻き巻きされながらやっと現実に帰ってきた。

「…………」

因みにメアリーは、メアリーとは違い、純粋な悪魔で、魔界からの留学生、ウァラクさん(♀)に抱かれ、頬擦りされている。因みに女郎蜘蛛さんにしろ、ウァラクさんも、擬人術と呼ばれる、中位から高位の魔物や妖怪が得意とする魔術や妖術(原理は基本的に同じ、名前が違うだけ)によって人の姿のままだった。因みに馬鹿な男を誘惑し、食い殺す為、人を食うタイプの魔物の人たちは女性が多かったりする。これは妖怪でも同じであり、まあ何が言いたいかと言えば、どこの場所でも男と言うのは馬鹿ばっかりだと。

「はっはっはっは、君も男だろうに、そんなことを言ってはだめじゃないか」

そんなことを言うのは(さとり)という有名な妖怪の心坂・黄泉路くん、瑣末なことだが、この名前は、生誕時に役所に提出しなければならない妖怪や魔物専門の戸籍のようなものに、固有名として記されているものらしい。どんな名前だよ。種族の特徴を捉えまくっているが。

「…………とりあえず、さあ、なんで女郎蜘蛛さんは俺を糸でぐるぐる巻きにしてるの?」

俺はとりあえず、未だにブレザーの袖口から白い糸を出して俺に巻きつけている女郎蜘蛛さんに抗議してみた。何が怖いって、縛っているのが顔と下腹部以外の全部って言うのが一番怖い。何する気だこの人、おっとりした顔で何考えているんだこの人、期待してしまうじゃないか!!

「あらあら、うふふ、私とみっちゃんの仲じゃない、私のことは固有名である二十重織・卯月から、うっちゃんと呼んで下さいませ?」

「…………おいおい光形くん、二十重織さんに向かって凄いこと考えるね! 僕ちょっと凄いと思ったよ! 蜘蛛なら尻から糸出せよとか、そうそう言える事じゃないよ!!」

言ってねえよ口に出してねえよぶっ殺すぞ馬鹿覚。

ほら見ろ遠くのほうで曲がりなりにもフォーマットは純粋な人間である俺のことを観察していた人間派のやつらがこっちを横目で見ながらヒソヒソ話を始めやがったじゃないか、これで村八分状態になったらどうしてくれる!!

それにそんなこと言ったら、せっかく話しかけてくれたうっちゃんが気持ち悪がって俺から離れていくじゃないか…………。

そう思ってうっちゃんを見たら。

「あらあら、白昼堂々と、こんなところで告白なんて…………! しかも出会って一時間も経たないうちに…………! これも私の男篭絡スキルのおかげ!! ああ、ご先祖様、私を女郎蜘蛛に産んでいただいて、有難うございます!!」

頬を真っ赤に染めて、その赤くなった頬に両手添えてくねくねしていた、だと…………!?

因みに描写がないが、ウァラクさんは笑い転げていた。そしてメアリーは蔑みの視線をこちらに向けている。そんなあなた方にお聞きしたい、スキルって何?

いやー、横文字なのはなんとなく雰囲気でわかるんだけど、俺、英語なんて誰も使えない田舎で育ったからなあ。

「さあ、決まりましたら初夜を! 急がなければなりませんね!! さっさと白無垢を着せてしまいましょう!!」

俺はこれでも男なんだが、制服着ている時点で気がつかないのか? 何故に白無垢。

「…………女郎蜘蛛の文化では、新婚初夜のときに、男の方に大量の糸を巻きつける習慣があるそうよ? これは希臘(ギリシア)にいるアラクネ族も一緒なんだって。何でも、糸を出して蛋白質を大量に消費し、それを求めさせるようにして、男から搾り取るみたい。…………因みにいっぱい出さないと、蛋白質不足で相手が暴走、本来の蜘蛛の性質に合わせて、捕食することによって蛋白質を得ようとするらしいわ」

以上、ウァラクさんの古今東西妖怪講座でした♪

「なるほど…………って見てないで助けろ!!」

「いやよ。愛する二人がナニをしようとも、それがたとえ教室のなかでだとしても、それを止めるほど、野暮じゃないわ」

ならそのニヤニヤ笑いをやめろっ!! この悪魔が!!

「そりゃそうだよ光形くん。彼女は悪魔なんだから」

そういうことが言いてえんじゃねえよ! 察しろ!! お前察しの良い妖怪のはずだろ!?

「あはは、馬鹿だなあ、察しがよかったら、山で猟師さんを精神的に追い詰めて、絶望したところを食ったりすると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」すると思うのかい?」

「おいこらやめろ! 気が狂ったかと思われるだろ!!」

それに明らかに察し良いだろお前、わかってやってるんだから。

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

おお! 友達の(貞操の)危機に颯爽と、とは行かずにも、混乱しながらも、一人の女子生徒が立ち上がった!!

その名はメアリー・カミオ!! 先祖に悪魔を持つ、黒魔術師である!!

「そ、そういうのは結婚し「いい加減に鬱陶しいわ!! 恥を知りなさい!!」」

しかし残念、その俺を救おうとする声は、他の場所で上がった叫び声によってかき消されてしまった。メアリーは可哀想に、涙目になっており、ウァラクさんに頭を撫でてもらっている。

されど叫んだ奴ナイス。驚いて俺の捕食への十三階段が途中で終了した。分かりやすく説明すると、驚いて糸を巻いていた手が止まった隙に、転がるように距離をとった。

俺が感謝の念をこめて、その声のしたほうを振り向くと、そこに立っていたのは、俺やメアリーと同じく今日編入してきた少女だった。安心してくれ、これで最後だから。

その少女は、どうやら魔術師たちに囲まれていたようだ。つまりあの子も魔術師らしい。教室の蛍光灯の白々しい光をきらきらと反射する、眼に優しくない銀色の長い髪を、まっすぐに下ろした、起伏の全くない、首の上がなく、男物の制服を着ていたとしたらどう見てもなよっとした男にしか見えなさそうな、残念な体型だった。

ほら、小説なんかで出てくる少女って、基本的に美少女が多くて、いい乳尻をした女が多いけど、世の中そんな上手く行くわけないのだ。

「難産型の体型って、初めて聞いたよ僕は…………」

呆れた声で覚が言うが、俺は喋るなと言わなかったか?

「言ってないよ。思っただけで」

「ならば一生その薄汚い口を閉じているがよい! 早急にな!!」

「君の知り合いのおじいちゃん、何様なのかな?」

「「「?」」」

幼馴染の祖父のことを知らないメアリー、うっちゃん、ウァラクさんは首をひねっていた。判らなくてもいいと思う、俺も正直係わり合いになりたくなかった。

「魔術師の誇り? そんなもの、必要ないわ。そもそもあなたたちは気に食わないのよ。何代にもかけて磨いてきた技術? 何代にもかけて培われた秘術? そんなもの、魔術師にとっては、当たり前のものじゃない!! あなた達は勘違いしているわ。そんな当たり前のことを、どうしてさも重要そうに語ることができるの? そんなもの、一般人にとっては料理と同じよ! 家庭の味を引き継ぐ、くらいの感覚でやるべきなのよ、本来は!!」

怒りもあらわに、その少女が目の前の魔術師たちに対して怒鳴る。その台詞に少し感動し、そちらを見ると、彼女が堂々と仁王立ちしている。

当然、先ほど挙げた数々の欠点が目立つ魔術師の皆様方は、怒り心頭なご様子です。

「へえ、なかなか珍しい魔術師だねえ。ちょっと気になるな、後で話しかけてみよう」

覚が興味深そうに言った。どうやら心は読まないようだ。

「…………実は、僕の読心術、半径二メートルくらいしか受信できないんだよね」

それは良いことを聞いた。今度から話しかけるときは二メートルの距離を保とう。

「あはは、やっぱりそういうと思った」

朗らかに、だが、どこか寂しそうに、奴は笑った。どうせ、それをばらしてしまい、人から気味悪がられ、避けられた事でもあるのだろう。もしくは、そういった心を読んでしまったか。

まあ、俺は男にはいい意味でも悪い意味でも興味などないので、美少女と、その目前の有象無象の魔術師共の観察に戻った。

ふむ、キナ臭い睨みあいになっている。正直に言って、俺は魔術師は嫌いなので、近くの机の上においてあった、誰かの筆箱を手に取る。

「…………あらあら光形さん。巻き込むときは、ちゃんと私らの許可も取ってくれないと…………、困りますよ?」

目ざとくその行為を見つけていたうっちゃんに苦笑と共にそう言われた。

俺も苦笑で返す。

「…………貴様、十年前に潰れた魔術師の家系の癖して、六代続く魔術師の家系のこの僕に…………」

「ふん、これだから嫌いなのよ。時代錯誤な奴らは、血統しか誇れるものがないのかしら? それに私の父が死んだのは、九年前よ。情報もろくに管理できないのね、六代続く魔術師の名門の家系のご子息様は」

嘲るように言い切った少女、それに対して拳を振り上げる、六代続く魔術師の名門の家系のご子息様(笑)。

そしてその「拳を振り上げる」と言う行動がサインだったのだろう、先ほど誰にも気づかれないように魔術陣を描き、待機していた背の高いもう一人の男子生徒に対して、その魔術陣が起動するよりも早く、俺は手に持っていた筆箱を投げつけた。

その結果――――

「ぎゃあっ!!」

なんと狙い違わず魔術陣を起動しようとしていた手に当たった筆箱は、その魔術の狙いをずらし、そしてその魔術によって引き起こされた目に見えない、当たったらそれなりに痛そうな衝撃波は、六代続いている名門の家系の魔術師のご子息(笑)に見事命中したのだった。

しかも顎を絶妙に揺らす角度で。

いや、魔術の方向性をずらす所までは考えたけど、それ以降は完全に偶然である。これも俺の日頃の行いがいいからだろうか、いやない、たぶん、向こう側の日頃の行いが悪すぎるのだろう。うん、それなら仕方ない。

因みに俺の周りや、教室の隅にぽつぽつと分かれていた魔物や妖怪な生徒たちは、今の喜劇を見て爆笑していた。亜人たちも溜飲が下がったのか、嬉しそうに見える。普通の人間な方々も、思いっきり噴出していた。大人気だな。

「き、貴様!!」

間違えて魔術を当ててしまった男子生徒が、今にも俺を殺しにかかってきそうな顔で、叫んだ。そして片手をこちらに向けて持ち上げ、魔術陣を描きながら、今度は詠唱する。

「範囲限定! 魔力充填! 発――――っっ!?」

―――ゴキリ、その音と共に、男子生徒の詠唱は中断された。

その理由は単純明快――――

「遅いわね、魔弾ごときの低級魔術に何を手間取っているのかしら? そんな弱小魔術、無詠唱で数撃つことによって当てる効果的な魔術でしょうに」

言外に「そんなことも判らないの?」と言いながら、魔術の少女は男子生徒の折れた腕を放しながら、やれやれと言った調子でこっちを見つめる。そんなに見つめられると期待するし誤解するぞ。

「…………さっきは有難うね。まあ、魔力は自分でも感知できたし、対応できたとは思うんだけど、助けてもらったんだから、礼は言っておくわ」

「礼などいらないから、気にするな。その名門魔術師(笑)殿が余りにも鬱陶しかったのでな、それに、所詮はたかが魔術師が、調子に乗られても困るし」

「礼はいらないから体で払えってさ」

ちょっと黙ろうか、そこの覚。

そしてそこの女郎蜘蛛、夫を親友に寝取られた人妻のような顔をするのはやめろ。

それに要らんわ、そんな中途半端な体なんぞ。

「そこの魔術師さーん」「させねえよ?」

俺の内心を読み取った覚があの女魔術師に報告しようと声をかける、だがそれもひとつの予想通り、これでも結構解析には定評がある! 貴様の読心術はもう弱点がわかっているんだよ!!

まあその弱点も読まれているわけだが、問題ない!!

ハーイ、サブタイトル詐欺でした。

さて、心を読んでくるという妖怪に対して、彼が採った対策とは……?

次回、霊界探偵? 何それ、田舎にはそんなものいなかったぞ?


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