幼馴染への手紙
お初にお目にかかります。しゃるろっと・こるでーです。この小説を読んで下さるという奇特な方々、どうか拙い文章ですが、御目溢しくださいますよう、お願いします。
拝啓、いかがお過ごしでしょうか。私――――前田光形です、一応あなたの幼馴染ですが、薄情なあなたは覚えているかどうかは正直五分五分の賭けだと思っています。
さて、そんな私がこの街、通称第十三学園都市にやってきて、一ヶ月ほど経過いたしました。ええ、正直に言いますと、電車に乗ったのが十年ぶりで、挙句の果てに飛行機の乗ったのが今回初めてという私にとって、最初にこの街にやってくるのは、苦行以外の何物でもありませんでした。ええ、こんな鉄の塊が、空を飛ぶはずがないとか、あんな細いレールの上を、こんな鉄の塊が走れるわけがないと、機体や車両を見るたびに顔を蒼くして、こわごわとおっかなびっくり乗って、周囲の乗客の方々に、失笑されていたのは今思い出しても恥ずかしい記憶です。
ええ何がいいたいかと言いますと、来ないほうがいい、ということです。ええ、あなたとしては一等仲の良かった幼馴染が、ひょっこり都会に出て無事に生きていけるのか心配、という配慮は理解できますが、頼むから来ないでください。恥をかいても知りませんよ。もちろん私ごときにあなたの行動を妨げる権利などがないことはわかっています。故にこれは脅迫ではありません。これは脅迫ではありません。大事なことなので二回言いました。こっちのような都会では、このような言い方がはやっているそうです。まあ、それはそれとして、これは忠告です。別にあなたがこちらに来るのは勝手ですが、恥を?くかもしれないので注意してください、という忠告です。牽制ではありません。
あの美人なお姉さんに、熱心に勧誘されて、この第十三学園都市にある、私立豊饒学園に三年生として編入しました。すごいですね。さすがはオカルト関係を専門として建設された学園都市です。超能力者やら、魔物やら、魔法使いなどがジャラジャラいます。しかも恐ろしいのが、そんな時代錯誤な連中の中でも、一等人間に近しい私が、一番この街の多彩な機能を使いこなせていないということです。皆さんが「やれやれ仕方ないなあ」という顔で助けてくれます。いいクラスメイトに恵まれました。私は幸せものです。それと、何故か「田舎、恐るべし!!」という風潮が、うちのクラスから広まっているようです。もしかしなくても私が原因でしょうか。ちょっと自分の子供の頃の体験を語っただけなのですが。
あ、友達も出来ましたよ。優しい子で、お金に困っている何人もの友達に、お金を分けてあげる、優しい子でした。わかりやすく説明すれば、小さな頃、夏祭りに皆で見た、顔がパンで出来ているヒーローのようなものでしょう。私はお勤めのかいあって、お金は一杯持ってますので、貰ってませんよ。あ、……そういえば、そのパンも食べましたよ。アンパンでしたっけ。甘くて美味しかったです。うちの村では小麦を余り作っていなかったので、初めて食べましたけど。美味しいですね、アレ。私的には焼いて、マーガリンとか言う白くて変わった油を塗って食べるのがベストです。牛の乳とも合います。あ、後、海の魚を初めてなまで食べました。ええ、刺身というらしいです。村で食べるのは大概が干物であったり、塩漬けだったので、とっても新鮮な感じでした。
…………気づいたら食べ物の話ばかりになってましたね。まあ、別にそんなことはどうでもいいんですけど、本当に都会って凄いんですよ。氷室ってあるじゃないですか、ほら、ゆっちゃんがよく作ってた、あれと同じようなものが、科学の力で作られてるんです。恐るべし、科学の力。
あ、勿論お勤めのほうも順調にこなしてます。正直一ヶ月に数度、機密なので書けませんが、あるところに行って、数分時間を潰すだけで終わってしまうので、とても楽です。一番仕事が多いのが、工業系技術の発展が著しい、第二と第八、そしてあの有名な第五の学園都市で、なんでも産業スパイがとても多いとか。次いで第六と第九の、農業系の都市かな。まあ、私のところに連れてこられるのは、もっぱら、暴力団関係とか、大陸系マフィアの方々が多いんだけど、本当に、人間というのは欲が深いね。私に言われたくはないかもしれないが。…………それとは逆に、一番来る人が少ないのは、真面目に宇宙人とのコンタクトを目指してる、第十二学園都市だよ。あそこと第十三学園都市は、他の国とも協力してるし、留学生がかなり多いから、あんまりいないみたい。ただ、ウチのとこから来る奴らは、若干気に入らないな。オカルトの住人が、刑法や条例で取り締まれないことを利用して、犯罪に巻き込むことが多いからね。そういうのはちょっときつめにやってます。
…………まあ、現状報告はこんなところかな。まあ、こっちは割合楽しくやってるよ。じゃ、夏休みに帰るから、それまで元気でね。ゆっちゃんや小父さんや鈴鹿様にもよろしく。
敬具
この小説はフィクションです。
実在の人物名から盗ったもの等はありません。
また、オリジナル小説です、似たようなシーンが他の小説にあったとしたら、それはもしかしたら無意識のうちに、影響を受けたとか、そういったものだと思われるので、私を責めないでください。泣きますよ。