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28話、ワクチン反対運動

何が感染のトリガーとなるか分からない。

最大限一方通行的な書き方を気を付ける。

これは私の独り言だ。



もし、「突発性対人恐怖症」って診断されて、他人の顔が恐ろしいバケモノに見えて引きこもっていたら、正常だ。


逆だ。


俺の頭がおかしくなったんじゃない。

アイツらの顔と中身が、実際に侵食されたんだ。


感染の侵食具合は個人差があるみたいだが、結局どいつもこいつもあの顔になる。いつもの顔が時々見えるやつはまだ侵食されきってないだろうが、時間の問題だ。諦める。



あいつらは『ミシロウイルス』と言ってるらしい。

あいつらみたいに認識を書き換えられて、この事態をただのパンデミックだと思い込まない。


仮にウイルスだったとしても、

「人の顔が怖く見えるウイルス」なんかじゃない。

「感染した人間の顔が、穴の空いた化け物に変貌する病気」だ。


俺が見ている悍ましい姿が、現実だ。

俺は非感染者で、あっちが感染者だ。



感染しないためのルールを書き残す。

ネットのオカルト情報も混じっているからガセも混じっているだろうが、"ああ"なりたくなければ、やっておくに越したことはない。

原因は十中八九、■■地域に伝わる『身代様』という土着儀礼だと思う。

今じゃ調べれば沢山情報が出てくる。



【感染しないためのルール】

・不自然な日本語には絶対に反応しない

感染者は日本語がおかしい。感染者同士だと気にならないようだが、

絶対に返事をしてはいけない。感染する。

恐らくネットでの返信もダメだ。

隔離病棟の時の奴はこれで感染した。ダメだ。


・名前を捨てる

名前も感染のトリガーだ。できるなら、自分の名前を知る人間が居ない場所まで逃げる。

SNSのアカウント名もダメ。今すぐ消す。必要な時はゲストで見る。


・会話のキャッチボールは絶対に安全とわかっている人間以外とはしない

おそらく顔は見ても大丈夫なはず。声を聞いても大丈夫なはず。

会話のキャッチボールは危ない。

買い物は極力無人販売、できればセルフレジを使う。

無理ならネットスーパーで置き配をする。


・「ミシロワクチン」は絶対に拒否する。

あんな得体の知れないものを体に入れない。

ワクチン反対派として弾圧されている連中の中に、俺たちと同じ「正常な目を持った人間」が隠れているはずだ。


・難しいと思うが、可能なら海外に逃げる

国外脱出できた奴は「大丈夫だ」と連絡が来た。

日本は終わりだ。





みんなおかしくなっちまった。





俺は少し前まで民族学をやっていた。

日本の儀礼とかの研究をしてた。

今回の事象は、間違いなく「身代様」のシステムが拡張されたものだ。

症状の完全な一致、呪いの発動条件が「名前の提示」と「同意」である点が一致する


感染症が変容していくように、呪いや儀礼のシステムも時代に合わせて変容していく。多分インターネットというものに適応した。

これからもっと日本語が上手になっていくかもしれない。テキストベースじゃ本物の人間と見分けがつかなくなるかもしれない。

そうならない事を祈るしかない。



感染手法はいくつか思い当たる。


少し前から、LINEとで見知らぬ奴から連絡が来たりした。

あの連絡を見返すと、「身代様」の伝承と同じだった。


恐らく、これも感染原だった。

これを面白がって返事をしたやつは感染した。



ただ、もっとデカい感染原があった。



政府が緊急事態宣言を出し、社会が完全にリモートワークへ移行した時期。皮肉なことに、対面でのコミュニケーションが減ったあの時期から、なぜか感染者(正常な人間)の数が激減し、事態は「収束」に向かった。

丁度その時期から流行ったものがある。



インプレゾンビだ。



流行ったツイートにぶら下がる、下手くそな日本語のリプライ。

何でもっとちゃんと翻訳しないんだって思った。

翻訳じゃなかった。

日本語しか、下手くそな日本語しかできない。

画面の向こうにいたのは、外国人業者なんかじゃない。

感染者だった。



一気に全員やられちまった。

皆、身代様の容量にされちまった。



多分名前はアカウント名

同意は、元々の伝承の定義もかなりガバガバだった。

引リツでの言及だったり、最悪プロフィールを閲覧する操作をする、だけでも成立しただろう。



おおかた、こんな感じだろう。



諦めない。

まだ全部は狂っていないはず。



諦めない。

俺みたいなやつが、まだ生き残ってるはず。



諦めない。

俺は一人になりたくない。

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