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信頼の王国  作者: 志々十勒
創世記─これまでとこれから─
19/26

八柱会議─応答会・戦略協議─

重苦しい会議室。


 壁の地図には再光会の聖地、汚職権益の廷臣連合、通称反逆の王冠(ディークラウン)派の影響圏、クーサンが「善意の領主」として祭り上げられつつある地域が赤くマーキングされている。


 ツバキは資料を積み上げ、正確に現状を把握してぶれない声で言う。


「陛下。反逆の王冠(ディークラウン)派は“政権強度テスト”を裏で継続。再光会も神学声明を準備中。どちらも、陛下の“人の信頼“という理念を宗教・旧貴族圏にぶつけてくる構造です。」


 ツバキは報告を終えて席につく。


「汚職宮廷官僚達が“神の名の権威”ですか……。」


 アーサーンはメガネを位置調整して表情を崩さずに皮肉たっぷりに呟く。


 マサヒトは沈黙していた。だが、その沈黙は明らかに動いていた。視線が周辺の勢力図をなぞるように動く。


 最近、ようやくこの“影”の行動線が見えてきた。マサヒトが妙に静かなときは、裏での暗躍の段取りを考えている時だ。


 ある時を境に暗器ギルド『沈黙の引き金(ロスト)』の情報はたち消え、静寂の沈黙へと消えていった。文字通りの“消えた”(ロスト)状態だ。


今思えば、あれも…。


 想像や想定で判断する性分ではないが、万が一にコイツが敵に回ることが有ったらと止められるのか…。


 そこへ、コマが資料を叩きつけるように置く。


「…これが第二の牙『語り部』の第二波。


 ファウスト王、これは、ただの世論操作ではない。国の底を揺らして感情圏の色を混ぜる行為に他ならない。だから腹が立つのだ。これは真実ではなく、感情だけを燃料にした装置だ」


 コマは淡々と、しかし冷えた怒りすら滲ませながら説明を始める。


「『語り部』の狙いは、王ファウストと英雄クーサンを対立させることではない。“民がどちらを信用すべきか迷い続ける”迷走状態の慢性的病巣の形成こそが目的だと私は推察するぞ。」


まず “善意の救済者クーサン”の物語化。

それを再光会が裏で承認。


 反王政派の“反逆の王冠”(ディークラウン)と呼ばれる“踊る道化”(ディークラウン)派が政治パッケージ化。


 外部の吟遊詩人・記録師に“偶像としての庶民の英雄クーサン”を流布させる。


「…三段攻撃!!」


コマの説明の途中でツバキは息を飲んだ。


「なるほど、これはファウスト王の政権の弱点を突く。……整合します。きれいすぎて、逆に恐ろしくなるほどです。


一つ、「若すぎる王の軽率さ」という物語の植え付け。王の未成就さが原因だとする虚構の根拠。


二つ、そんな未熟で軽率な「王より先に民を救った英雄のクーサン」と言う作られた偶像。


三つ、「神殿は民意の英雄である彼の善行を祝福する」と言う宗教的肯定。


この三つを連動させる世論の不安からの王不在の英雄譚の形成。


まず間違いなく公開応答会を“審判の場”に変える罠が潜入してる事でしょう。


 質問者役に“無垢な民”を偽装した神官やディークラウンの息のかかった平民を混ぜる。」


 アーサーンは状況から公開応答会が審議の場と化すと察する。整理された事でより明瞭になりシドが頷く。


「応答会にて『王は今まで何をしていたのか?』、『クーサン様は神に選ばれたのでは?』などの“刃”が仕込まれている。って事だろう。」


 八柱全員の理解が揃ったところで、コマは続ける。


「ファウスト王、これが“『語り部』の第二の牙、物語戦略の全貌”です。国の足元に根拠の事実を積むんじゃない。感動する為の物語で感情を積む。


 しかし、ここで論破しても意味がありません。信頼の国を作るのならば、この“物語に勝つ”必要がファウスト王にはあります。」


 コマの言葉に頷くファウスト。


「私の知識を補完してくれるのだろう…。コマ助言を聞こう」


 王の言葉にコマは頷き会議はより深い所へ入っていくのだった。

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