寓話『これまでの終わりとこれからの再生』
「信頼の王国」
『寓話』-フェルシア読み聞かせ版-
これはフェルシア王国で親から子に語られる人気の寓話。
信頼の国として立った王国のお話…。
◆お気に入りの物語
ベッドの上で、少年は今日も母親にせがみました。
「もう一度、フェルシアの話を聞かせて!」
母親はにっこり笑って、話しはじめます。
――これは、信頼とは何かを問い、学び、共に育てる物語。
◆安心の国
昔々、安心の国フェルシアという国がありました。
王様のもと、国民たちは笑顔で暮らしていました。
空には青い光が広がり、街角には鐘の音が響いていました。
国民の心には「ここは安全だ」という安心感が満ちていました。
それは、誰もが互いを信じ、助け合っていたからでした。
◆よそ者の王
ところがある日、別の国から来た王様が言いました。
「この国は効率が悪すぎる。私のやり方の方が正しい」
彼は元の王様の声を無視し、好き勝手に国を動かしました。
すると国民は思い出します。
「そうだ、昔の国は安心だった……でも、今は違う」
国は混乱に包まれ、街の鐘も音を失い、笑顔が消えていきました。
◆荒れ果てた国
一人、また一人と「王様」を名乗る者が現れました。
強い者が弱い者を打ち倒し、国は荒れ果てました。
国民は諦め、沈んだ表情のまま国を去っていきます。
残ったのは荒れた街と、裸の王様たちだけ。
空からそれを見た神様は、静かに嘆きました。
◆時間を巻き戻す
神様は魔法をかけ、時間を巻き戻しました。
ただし、みんなの記憶だけは残ります。
国は再び平和を取り戻しました。
しかし、元の王様は思います。
「ルールで縛りすぎた……人々の顔から笑顔が消えている」
王様はそこで悟りました。
「もう二度と、あんなことは繰り返すまい」と。
◆青年王の登場
王様は静かに王座を降り、国民に問いかけました。
「これからの国は、みんなでつくろう」
選挙が行われ、青年が新しい代表に選ばれました。
青年王は静かに言いました。
> 「僕もかつて、裸の王様の一人だった。
でもだからこそ、この国を“信頼でつながる国”にしたい」
「ルールは人を縛るためではなく、安心を支える約束だと思う」
◆信頼の芽
国民の一人が笑いながら答えます。
「信じて、助けてあげるか!」
その声に導かれるように、街には少しずつ笑顔が戻ります。
鐘の音もまた響きはじめ、花々が揺れました。
◆未来はこれから
国はまだ成長の途中。
青年王と国民は共に歩み、信頼でつながる国をつくります。
そして少年は、毎晩この物語をせがみます。
「未来はどうなるのかな?」
母親は微笑みながら答えます。
「それはね、君たちが信頼を育てる力で決まるのよ」




