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あやまちから始まる恋の罠  作者: アルケミスト


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(赤坂なら、30分あれば着ける……!)


 こんなことに意味があるのかなんてわからない。


 正しいのか間違っているのかもわからない。


 それにもちろん、行ったって会えるかどうかもわからないけれど。


 ただもう、内から込み上げる衝動が抑えられない。


 それだけだった。


 どうなったっていい。


 傷ついたっていい。


 ……ただ、知りたい。


 一哉が話してくれないなら、彼女からでも何か聞けるならそれでいい。


 あたしは走った。


 自分がこれから向かう先はどこなのかわからない。


 絶望なのか、希望なのか。


 それでも少しでも真実に近づきたくて、あたしは懸命に走り、再び電車に飛び乗った。





 赤坂でも電車を降りるなり再び走り出して、さっき見たさくら広場を目指す。


 たどり着いた広場には特設ステージみたいなものができていて、ステージ上ではまだ何かが行われていた。


 特に入場制限もなく、ステージの近くに行けばイベントが見られるようだ。


 あたしは人だかりを掻き分けて進んだ。


 だけどある程度近づくと、そこより先は報道陣のエリアになっていて、それ以上前には出られなくなる。


(これ以上はムリか……)


 でも、とりあえずステージの様子はだいぶわかるようになった。


 あたしは爪先立ちになって視界を確保して、ステージに目をこらした。


 あの女の人の姿を探して。


(いた!)


 今はもうインタビューはされていない。


 彼女はステージの右端。


 それこそ司会者の傍に立って、ステージ中央で行われている内容を眺めている。


 あたしは彼女の視線を追うように、中央にいる人達を見た。


 そこにいるのはふたりの男の人。


 そしてふたりの前には背の高い台があって、何か商品みたいな物が置かれている。


 スマートフォン?


 いや、もうちょっと大きいから今流行りのタブレットかも。


 とにかくそんな感じの電子機器。


 商品と男の人達を交互に眺めているうち、あたしはハッと気づいた。


 片方の男の人に、見覚えがある。


 そして今さらながら、ステージ後方にかかっている看板の大きな文字を目で追った。


 株式会社プレシャスネット新世代機種対応ソフト発売記念イベント。


(株式会社……プレシャスネット……)


 やっと思い出した。


 そうだ。


 あの男の人は、この間のイベントで特別ゲストとしてスピーチをしていた、プレシャスネットの社長さんだ。


 名前はたしか、そう、久保雄一。


「え……、久保……?」


 ドクンと胸が弾む。


 そうだよさっきTVで見た彼女の名前は、久保彰子。


(同じ苗字ってことは、親族?

 でもこんなイベントにまで参加するっていったら)


 奥さんかもしれない。


 よぎった思いを、あたしは振り払いたかった。


 一哉がこっそり会っていた相手が人妻だなんて、どんどん嫌な想像が膨らんでしまうから。


(そうだ……兄妹かもしれないじゃない。

 彼女も会社の役員とかで)


 結婚しているかどうかもわからないのに、奥さんだなんて決めつけることもない。


 あたしは言い聞かせるようにそう考えた。


 プレシャスネットの名前はよく聞くけれど、なにしろ、社長自体のことなんてあたしはほとんど知らない。


 いくら有名企業の社長だからって、そうそうメディアに顔を出しているわけじゃない。


 顔を出すと言ったらせいぜい専門誌とか、Webサイトとか……。


「……!!」


 思考の途中であたしは目を見開いて固まった。


 もうひとつ、思い出したんだ。


 いろんなことが立て続けに起こったものだから、つい今まで忘れていたけれど……。

 

(なんで忘れてたの……!?

 そうだよ、久保雄一。

 あの雑誌にも表紙に名前が書いてあったじゃない。

 インタビュー記事に載ってるって……!)


 一哉が記事を見て様子のおかしくなった、あのビジネス誌。


 彼が見ていたのは、久保雄一の記事だったんだ。


『きっと少しだけ、過去を思い出していたんでしょう』


 菅原さんの声が頭によみがえった。


(久保雄一と久保彰子……。

 ふたりと一哉は、どんな関係なの?

 三人の過去に、どんなことがあったっていうの……!?)


 人ゴミの中、喧騒がフッと耳から遠のき。


 コマ送りの映像を見ているような錯覚を感じながら、ステージ上のふたりを交互に見つめると……。


『それでは、本日は誠にありがとうございました!

 プレシャスネット代表取締役社長、久保雄一さんでした!』


 マイクを通した司会者の声と、大きな拍手。


 イベントが終わった。


「……!」


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