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あやまちから始まる恋の罠  作者: アルケミスト


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 菅原さんと話をした日から一週間が過ぎていたけれど、あたしは何だかスッキリしない日々を過ごしていた。


 あの雑誌のこと、一哉の過去のこと。


 そして菅原さんの言っていたこと。


 一哉のことは気になるけれど、それを思うと菅原さんの言葉が胸に引っかかって、一哉に尋ねるのをためらわせる。


 あたしが一哉のことを知りたいのは、誰のためなのか?


 なんのためなのか?


(わかんないよ、そんなの……)


 知りたいのは、あたし。


 だって気になるから。


 あたしと知り合う前の一哉にあったことも、それを隠している理由も、気になってしょうがない。


(だけどなんのためか、なんてわからない。

 好きな人のことを知りたいと思うのは、当然なんじゃないの?)


 結局何度考えても、あたしの中で菅原さんに胸を張って告げられるような答えは見つからなくて。


 だから一哉にも何も言えずに、モヤモヤしたものを抱えながら毎日を送っている。





「はあ……」


 知らず知らずのうちにため息をつきながら、あたしは手にした郵便物のチェックを始めた。


 秘書室に届いた副社長宛の郵便は全部最初にあたしが開封して、必要なものだけを一哉に渡すようにしている。


 慣れた手つきで順番に開封して、目を通して必要か不必要かの仕分けをして……。


(招待状……?

 これは、一哉に聞かないとわかんないな)


 見るとその手紙の差出人は前からつき合いのある出版社で、一部上場した記念のイベントがあるらしく、一哉をその来賓として招待したいという主旨だった。


 一哉からそんな予定があるとは知らされていないので、アポなしで送られてきたに違いない。


 あたしはすべての郵便の仕分けを済ませ、渡すものと伺いを立てる数件の郵便を持って副社長室を訪ねた。


 まずあの招待状の内容を告げると、一哉は考えるように唇に指を当て、


「一部上場記念?

 アポなしだし別に断ってもいいだろうけど……まあ、なんかこっちにメリットになることがあるかどうかだな。

 内容と日時は?」


「詳しい内容は書かれていませんけれど……特別ゲストでさくらテレビの会長とプレシャスネットの社長が招かれていて、スピーチがあるそうです。

 日程は……今度の金曜の19時ですね」


 日程を口にしていて気づいた。


 この時間はたしかもう、接待が入っている。


(なんだ、どのみち行けないじゃん。

 うっかりしてた……)


 最初にまず日時を見ればよかった。


 あたしは招待状から顔を上げて、


「すみません、スケジュール的に無理でしたね。

 先方には辞退の返事を……」


『出しておきます』と言って、さっさと次の郵便の確認に移ろうとしていた。


 だけどそんなあたしに返ってきたのは、意外にも……。


「いや、行く」


「えっ?」


 あたしはキョトンとして一哉を見つめる。


「で、でもこの時間はもう予定が」


「わかってるよ。

 トリス化粧品の接待だろ。

 悪いけどそれは日程を変更してくれ」


「え……」


(変更って、こっちが接待する立場なのに?)


 あたしは驚きでしばらく言葉を忘れた。


 もちろん日程の変更はできるだろうけれど。


 でも、そんなことまでして、このイベントに参加する必要ある?


 接待とイベントの来賓なんて、どっちがビジネス上大切か、考えるまでもないのに。


 要領よく仕事をこなす一哉が下す判断としてはそれはあまりに意外で、あたしは戸惑いを感じずにはいられない……。


「本当にいいんですか?」


 控えめにもう一度尋ねたけれど、一哉は迷うことなく首を縦に振った。


「ああ。

 招待状にも出席で返事しておいてくれ」


「……わかりました」


 ここまでハッキリ答えられたら、それ以上言うことは何もない。


 あたしは素直に返事をしたけれど、胸の内では何だか変な胸騒ぎがして、落ち着かなかった……。

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