二人が友達で良かった
「……ありがとう二人とも。少しだけ楽になったよ」
悩みを吐き切ったミチルの表情は少しだけ清々しかった。
「それと早苗の言う通り、茜は渚の味方の方が良いわね。男の娘同士や女の子同士の方が話せることもあるだろうし」
ミチルの言う通り、だから早苗はもしなにか喧嘩とかしてしまったら、ミチルには早苗が付き、渚には茜が付くようにした。
それは男の娘同士や女の子同士の方が、話しやすいこともあるからだ。
「あたしは渚のことが好き。だから、嫌われるのが怖かった。おかしいよね、付き合ってるのに嫌われるのが怖いって。あたしも渚があたしのことが好きなのは分かっている。でも、だからこそ嫌われたらと想像したら怖くて、イチャイチャできなかった。渚に『まだそれは早いよ』って言われたら立ち直れないから」
何度も言うが、渚はミチルを溺愛しているためそんなことは万が一にもないと早苗は思う。
でも恋は盲目という言葉もある通り、恋をしていると視野狭窄に陥りやすくなる。
それが今のミチルだった。
「だけどあたしは渚の彼氏だもん。素直にイチャイチャできるように頑張ってみる」
ミチルは二人に励まされ、渚とイチャイチャする覚悟を決める。
「頑張ってミチルちゃん。絶対上手くいくよ」
「渚相手ならなんの心配もいらないよ。渚もミチルのこと大好きだから」
一歩前へ踏み出したミチルに、早苗も茜もエールを送る。
出会った当初から、ミチルは不器用な男の娘だった。
それが原因で、結構勘違いされてしまうことも多いのだがミチルは心優しい男の娘である。
早苗や茜ですら知っているのだ。渚もミチルが不器用な男の娘だっていうことは知っているだろう。
「ありがとう二人とも。二人が友達で良かった」
「頑張ってねミチルちゃん。渚ちゃんを信じて」
「大丈夫ミチルなら。きっと渚もミチルに甘えられて来られたら喜ぶと思う」
ミチルは自分のために応援してくれた二人に最大の感謝を伝える。
二人は素直に甘えられないだけでラブラブなんだからなんの心配もないと早苗は思っている。
それは茜も同じで、穏やかな表情を浮かべている。
下校時間も迫って来たということで、今日はここでお開きとなる。
帰路につくミチルの足取りは軽く、もうなんの憂いもなかった。
早苗は茜と目が合うと、思わずクスリと笑い合う。
「もうミチルちゃんは大丈夫そうだね」
「そうだね。もともとお互いが大好きだからね。あたしたちが心配することなんてなにもないよ」
悩みが吹っ切れたミチルに背を向けて二人も帰路につく。
二人の影が正面に長く伸びていた。




