どうやったら早苗たちのように素直にイチャイチャできるの
そのため校門前で渚と別れた後、早苗と茜はミチルが待っている屋上へと向かう。
運動部の掛け声や吹奏楽部のチューニングしている音が、早苗の体に響き渡る。
大きな柵があるため、早苗たちが通っている高校は屋上が解放されている。
屋上に着くと、茜色の空の下、ミチルが二人を待っていた。
「ありがとう二人とも。来てくれて」
不安そうな表情が一変、二人が屋上に来たことにより、ミチルは安堵の表情を浮かべる。
「ううん、当たり前だよ。だって友達だもん」
「それでミチルはあたしたちにどんな相談かな。まっ、渚のことだと思うけど」
相談したいことがあったら、その人の元に行くのは友達として当然のことだ。
茜は相談内容を聞きつつも、おおよその目星は付いているようだった。
「茜の言う通り、相談内容は渚のことよ。とりあえず立ちっぱなし疲れるから一回座りましょう」
相談内容を話す前に、ミチルは早苗たちに気を使って屋上に併設されているベンチに座るよう促す。
とりあえず早苗たちはベンチに座り、ミチルの話を聞く。
ちなみに席順は早苗を真ん中に右側に茜、左側にミチルが座る。
「単刀直入に聞くけど、どうやったら早苗たちのように素直にイチャイチャできるの」
ミチルの悩み。
それは、素直に渚とイチャイチャできないことだった。
別に、これは普通に接しているだけであってイチャイチャではないのだが、そんなことをツッコむのは野暮というものだろう。
「う~ん。素直に渚ちゃんとイチャイチャすれば良いと思うよ。だって渚ちゃんもミチルちゃんのことが好きだもん」
「それができないから苦労してるのよっ……ごめん、強く言い過ぎた」
「ううん全然大丈夫。素直にミチルちゃんの愛情を表現すれば自然にイチャイチャできると思うけど……」
渚はミチルにゾッコンだから素直に甘えれば、イチャイチャできると早苗は考える。
それを伝えたのだが、なぜか怒られてしまった。
ミチルもギャグギレということは自覚しているらしく、すぐに早苗に謝罪した。
「ミチルはきっと素直に甘えるのが恥ずかしいじゃないの」
「うっ……。だって、渚と話すとなぜか緊張するし、素直になれないっていうか」
茜の指摘は図星だったようで、ミチルはうめき声を上げる。
ミチルが渚に甘えたり、イチャイチャできないのはミチル自身がそれを恥ずかしがっていて不器用だからだ。
「甘えるのは全然恥ずかしくないよ。ほら、こんな風に」
いつも茜に甘えている早苗からすれば、どうしてミチルが渚に甘えるのが恥ずかしいのか分からなかった。
同い年とはいえ、早苗と茜は一年近く歳が離れている。
そのため、誕生日が早い茜は早苗よりも大人っぽく、つい頼ってしまい甘えてしまう。
「確かに、早苗はいつもあたしに甘えてるよね。それはそれで可愛いんだけど」
早苗に抱き着かれて甘えられている茜は、満更でもない表情を浮かべる。
「どうしてそんなに素直に甘えられるのよ。だって、もし嫌がられたら怖いじゃない」
少しずつミチルの悩みの根本が分かって来た。
ミチルが渚に緊張するのも恥ずかしがるのも、全ては渚に拒否をされたらどうしようという恐怖だ。
親しき中にも礼儀ありということわざがある通り、どんな親密な間柄でも守るべき礼儀がある。
「確かにもっと仲良くなろうとスキンシップをして嫌がられたら怖いよね。でもそれは大丈夫だと思う。だって渚ちゃんはミチルちゃんのこと本気で愛しているし、もし嫌なことをしちゃっても、渚ちゃんはミチルちゃんを傷つけないように言ってくれると思う。それがカップルだと思う。もし渚ちゃんにひどいことを言われたら私が味方になってあげるから心配しないで」
早苗の知ってる渚は、嫌なことを嫌だと言って拒絶するような女の子ではない。
ミチルも知っていると思うが、渚は本当にミチルのことが大好きだ。
今日だって、ミチルと一緒に帰れないだけであんなに落ち込んでいたのだ。
嫌いなわけがない。
それにもし万が一、ミチルが渚のことを傷つけて落ち込んでも自分がミチルの味方になってあげる。
「あたしもミチルの味方だよ」
「ううん、茜ちゃんは渚ちゃんの味方をしてあげて。そうしないと不公平だから」
「……確かにそうだね。軽率だったよ」
茜も心優しい女の子だ。
だから茜もミチルの味方になろうとしてくれたが、それでは逆に渚だけが悪者になってしまう。
そうならないようにも、早苗は茜には渚の味方になるようにお願いした。




