23 贈り物
町に戻ると、ツアミたち受付嬢が黄色い悲鳴で迎えてくれた。
すでに、ピアニはダンジョン発見の報で沸いていた。
いかだで一足先に帰ったアトラが吉報を触れ回っているらしい。
「君に任せてよかったよ、シオン君!」
普段、気弱そうな顔をしているギルマスのリオトックも満面の笑みだ。
ダンジョン発見は町おこしになる。
跳ね上げ橋の修復や町じゅうの窓の修理。
出費がかさんでいただけに嬉しさもひとしおだろう。
「この町はきっと賑わうぞぅ!」
リオトックは年甲斐もなくはしゃいでいた。
まあ、これで俺も魔王呼ばわりされなくなるだろう。
魔王は町おこしなんてしないからな。
「さっそく明日から純魔結晶の採掘が本格化するみたいですよ! まだまだ底が知れないダンジョンですからねぇ。拙者も忙しくなりそうでござる!」
アトラも喜色満面だった。
暗響窟に大挙として押しかければ、遭難者が続出しそうだ。
だが、彼女らはプロだ。
うまくやるだろう。
たとえば、耐水性の塗料を塗りつけるとかすればいい。
視認性は格段に上がるはずだ。
俺たちが見つけた鉱床は、後日、シオン鉱床と名付けられた。
ダンジョンの命名権はギルドにある。
しかし、ダンジョン内の鉱床については発見者に命名権が委ねられるらしい。
今回は俺である。
もちろん、俺は遠慮した。
なんというか、おこがましいしな。
しかし、クラウとアトラの強い要望もあり、採用されてしまった。
これから並み居る冒険者たちの手でシオン鉱床は削られていく。
複雑な心境だ。
縁起が悪い。
最後の一粒を採ったとき、俺の命もついえたりしないよな。
不安だ。
サンプルにと持ち帰った純魔結晶はそっくりそのまま俺のものになった。
今回の依頼の報酬という形だ。
鑑定にかけると、王都の一等地に家が建つほどの値が付いた。
「家が建つ……か」
瓦礫の山となったノーエン邸をふと思い出した。
やれ、と言ったのはノーエンだ。
だが、やったのは俺である。
実行犯として一抹の申し訳なさはあった。
ピアニの宿で快適な夜を過ごしている間も、心にはノーエンの顔が浮かんでいた。
星空の下、泣きながら夜を明かす情けない顔だ。
大きな畑があるとはいえ、新居を建て直すとなると骨だろう。
俺は飛脚を雇ってノーエンに贈り物をすることにした。
一番大きな純魔結晶をプレゼントしてやる。
王都の一等地に家が建つなら、片田舎に城が建つだろう。
値崩れする前になるべく高く売れ、と一文を添えて、俺は飛脚を送り出した。
これで、後腐れもなくなった。
枕を高くして眠れそうだ。
「すきな人と裸で寝たのに、まだできない……」
俺の隣ではクラウが一糸まとわぬ姿でめそめそしている。
ここは、さるホテルの最上階。
警備は厳重。
窓側は水路。
しかし、彼女は当然のように忍び込んできていた。
そして、寂しそうな顔で下腹部を気にしている。
「できないって何が?」
「こども」
「子供ならここにいるだろ」
俺はクラウの額をコンと小突いた。
裸で寝るだけで子供ができると思っているなら、お前の脳みそはお子様仕様だ。
「シオン、どうやったら、こどもってできる?」
純粋な顔で訊かれた。
その答えを俺は知っている。
こうやるんだよ、と教えることもできる。
だが、アレだな。
なんというか、アレだ。
純真無垢な瞳で見つめられると答えに詰まってしまう。
「アトラに質問してこい」
彼女は物知りだからな。
俺はクラウに背を向けて目をつむった。
ぴったりと張り付いてくる熱い体のせいで、なかなか眠れなかった。
これにて完結です。
ご愛読ありがとございました。
次の拙作を鋭意執筆中です。
またよろしくお願いします。




