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【学校編】魔女の娘は正義を知らない ~魔女の娘を監視していた私が、彼女を救うヒーローになった話〜  作者: りりきち
3章 ずっと友達だから。何者だとしても

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31 歴史と地続きの神話。魔女は、実在した

「さて、本日は我々の宇宙史について学ぶとしよう」


 巨大な講堂の真ん中で、教授が真っ直ぐに立っていた。魔法使いみたいな灰色のローブを引きずり、空中にふっと手をかざす。


 フォン、と薄水色の半透明のホログラムが立ち上がった。このホログラムは講堂全域と同期しているらしく、全く同じデザインのものがイチヒたちの手元にも現れた。


「この宇宙がいつ産まれ、どこへ向かっているのか?  答えられるものはいるかね?」


 教授の問いかけに、イチヒはちょっと迷って周りを見回した。

 ……こういう時、すぐに手を挙げられないの地球人って感じだな……

 誰も手を挙げないのを見て、ついためらってしまう。

 


 するとリリーゴールドが肘でつついてきた。


「イチヒなら答えられるって!  ね!」


 にへら、と笑うリリーゴールドを見てイチヒは右手を挙げた。その様子を、リリーゴールドが満足気に見ている。

 だが――教授が呼んだのは、イチヒの名前ではなかった。


 

「おお!  では、サフィール・エレイオス君!」


 先程の彼だ。イチヒは講堂を見回して、さっきのネイビー頭を探す。

 サフィールは講堂の真ん中より少し前にいた。

 その時、彼はゆっくりと振り向いたのだ。

 イチヒと目が合うと、ふっと唇に笑みを乗せる。……まるで嘲笑うかのように。


 サフィールは立ち上がると、人好きのする笑顔を口元に添え直して、鈴を転がすような美しい声で答える。


「はい!  宇宙は約300億年前にビッグバンによって誕生し、全ての銀河はグレートアトラクターに向かっています!」


「正解である!」


 教授が満足そうに頷いた。

 それを見ていた周りがざわめきだす。


「おいあれ……β班の……」 

「知ってる、……銀葬先鋒隊(ガラクス・セパルト)の候補生……」

「……頭もいいのかよ……」


 耳に飛び込んできた単語に、イチヒとリリーゴールドは顔を見合わせる。

 ――銀葬先鋒隊(ガラクス・セパルト)候補生だって……?!  こいつが?!


 もうイチヒの中で、サフィールはいけ好かないヤツ認定されていた。

 ……さっきの目つきといい、なんかぶつぶつ呟いてた態度といい……気に入らねえ!  


 教授が、すっと手を振るとホログラムが展開する。そこにフルカラーの球体モデルが現れた。

 半透明な黒い玉の、球体の内側の真ん中に穴がある。まるで砂時計の砂が落ちるように、その真ん中の穴に向かって内側の中身が滑り込んでいる。


「今君たちの前に現れたのが、我々の宇宙を模した宇宙儀である!  そしてその中心が、グレートアトラクターと呼ばれる、巨大な重力源だ」


 地球儀とは違い、宇宙儀は球体の外側ではなく内部に星々が存在している。

 透けた玉越しに、銀河が幾つも輝いているのが見えた。


「グレートアトラクターは、ブラックホールの何万倍もの強い重力を持っており、全ての銀河はこの一点へと常に引き寄せられ続けている。

 その先は、諸説あるが――何らかの別の世界に繋がっている、というのが最新の研究で分かっている」


 教授がまたふわっ、と手を動かす。

 宇宙儀がぐーんとズームされ、視界いっぱいに様々な銀河が広がっていく。

 そして、視点がスライドしてグレートアトラクターが拡大表示になる。

 そこは銀河がいくつも入るような1つな大穴があり、まるで滝のように、黒い宇宙空間ごと引きずり込まれていた。


「残念ながら、グレートアトラクターの観測結果では、我々はこの穴に入ることは出来ても出てくることは出来ない……との演算結果がある」


 シュンッと宇宙儀はまた縮小して、元の球体へと戻る。


「数多の銀河が見えるであろう。全宇宙に存在する銀河は――何万億にものぼると推定されている。

 我々が観測できた銀河だけでも、1万以上の銀河が見つかっている。」


 

「宇宙の成り立ちについては説明した。では、我々『宇宙軍』発生の成り立ちについて説明しよう。

 『宇宙軍』は今や、観測可能な宇宙のおよそ半分の銀河に存在する巨大組織だ。『宇宙軍』の始まりは約1万年前に遡る」


 宇宙儀がぐるん、と回転すると一気にとある銀河までズームしていく。その中の1つの恒星系を捕えるとさらに拡大して、視界いっぱいに広がる。


「ここが、『宇宙軍』の始まりの地、ソル=ラティウム銀河だ。そしてこの中で、ひときわ眩く光る恒星がソル。このソルの周りを9つの惑星が公転している。これをソル系と呼ぶ」


 イチヒは、宇宙儀を食い入るように見つめる。太陽系出身の彼女にとって、他の太陽――たとえばソルのような――が珍しくて仕方がなかった。


「このソル系において……第4惑星ラティオ、第5惑星セントゥリオンから『宇宙軍』の文明は始まった」


 まばゆい巨大なソルの周りを、9つの惑星が楕円軌道で公転している。そのうちの、4番目と5番目はまるで双子のようにぴったりと寄り添いながら移動していた。


「さて、みんな『魔女神話』は覚えているね?  

 ――その『魔女』はソル系にも多大な文明をもたらした。その技術によって発展したのが、我々『宇宙軍』である!」


 講堂にざわめきが広がる。

 そりゃそうだ。『魔女神話』が『歴史』の授業で出てくるなんて思わない。

 子供の頃学校で学ぶ『魔女神話』はほとんどおとぎ話のような存在だったし、イチヒだっておとぎ話を脚色したものだと思っていた。

 

 ――リリーゴールドに出会うまでは。



ここから、ついに世界の最大の謎『魔女』の存在が紐解かれていきます。


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