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113 リリーゴールドとイチヒ――ふたりは最強のバディ

 ――次の日。卒業式で数日ぶりに顔を合わせたサフィールに、すぐにピアスを指摘される。


「あれ? イチヒ、ピアスなんてするんだ。アクセサリーとかしないタイプだと思ってた」

「……おう、まあな」


 歯切れの悪い返事に、サフィールが首を傾げていると、リリーゴールドが2人の間に飛び込んでくる。


「これね! あたしがあげた『魔法』のピアスなんだあ、ふふん」

「リリーゴールドお手製の『魔法』?! 何それ最強過ぎない?!」


 サフィールの全力で魔法を羨ましがる素振りに、イチヒの気恥しい気持ちもどこかへいく。

 そして、サフィールの姿を見てはっと思いついた。

 ……そうだ、これは『魔法の武器』だと上に申告すればいつでも付けてられるよな……いいな。今日帰ったら申告書を書くか。実際、こいつ『魔法手榴弾』だしな。

 そんなことを考えながら、イチヒはサフィールに声をかける。


「そうだ、サフィールも彼女になんか魔法の作ってもらえよ、ネフェルスなら喜んで作ってくれるだろ」

「あー!! 確かに!! そうしなよー!」


 リリーゴールドも全力で同意してくれる。

 それを聞いたサフィールは、喜ぶより先に顔を真っ赤にした。

 付き合ってから何ヶ月も経つのに、サフィールは未だに恋バナが恥ずかしいらしい。


「ななな……! で、でもちょっと……ネフェルスに頼んでみる」


 目を白黒させながら、耳まで真っ赤なサフィールはごにょごにょいいながら俯いてしまう。

 

 ネフェルスは、アストライオスにまだ乗っている。アストライオスは、リリーゴールドが卒業するまでの間、惑星シジギアの山岳地帯、かつて古代遺跡として埋まっていた場所に停泊させてある。


「じゃぁアストライオスに声かけとくね!」


 4次元存在は、気軽に脳波通信を使う。後でゆっくり声をかけようなんて概念がないのだ。

 サフィールの心の準備が整う前に、リリーゴールドはアストライオス宛に『サフィールが、ネフェルス手作り魔法のアクセ欲しいって!』と送ってしまう。

 しかもちょっと内容を端折ったせいで、さも恋人にアクセサリーをねだる彼氏の図になっている。なお、アストライオス宛なのでセトにも丸聞こえである。

 だが、初恋もまだなリリーゴールドには、そんな恋の機微はわからない。


「な、なな何て送ったの?!」

「サフィールが、ネフェルス手作りの魔法のアクセ欲しいって! って言ったー! ネフェルスがすごい喜んでたよ?」


 サフィールの慌てた質問に、リリーゴールドは事もなげに返事をする。それを聞いた瞬間、サフィールはまた顔を真っ赤にする羽目になる。


「……リリーらしいな。うん、諦めろ、サフィール。

 こりゃセトもはしゃいでるだろうな」


 イチヒが、サフィールの背中に声をかける。

 リリーゴールドだけが、『?』の顔をしていた。


 


 ――数時間後、卒業式が終わって解散したイチヒとリリーゴールドはアストライオスに乗っていた。

 あの雪山の中に行くのはきつすぎるので、アストライオスに迎えにこさせたのである。


 サフィールは、上級士官学校へ進学が決まっていた。

 いずれまた会うことがあるかもしれないが、今はしばらくのお別れだった。


 リリーゴールドは、さっきの卒業式で撮った写真を空中にホログラムとして投影して眺める。

 入学式に比べると、卒業式の参列人数は1/3ほどに減っていた。元々、養成学校の卒業率はあまり高くない。だが、今回の事件を受けて卒業生の数は例年より少ないらしい。


「大佐たちが喜んでたな。私とリリーが銀葬先鋒隊(ガラクス・セパルト)に残るって知って」

「うん! また一緒に働けて嬉しいって言ってたね!」

「サフィールは進学しちゃったしな」


《おっ? それが卒業式の写真であるな! 卒業めでたいである!》

「いい写真じゃん! ちゃんリリも、イチヒも卒業おめ!」


 イチヒとリリーゴールドの話す元へ、セトとネフェルスが近寄ってくる。リリーゴールドは2人へ手を振った。


「わーいありがとー!」

「セト! ネフェルス! ありがとう」


《ほほう、眩しいな! いい写真である!》


 セトが、リリーゴールドの肩の辺りに収まりながら何枚もホログラムをスライドしていく。

 それを横目に見ながら、イチヒはネフェルスに声をかけた。


「それで、ネフェルスは結局シジギアに残るのか?」

「うん! ウチやっぱ、サフィールのそばに居たいし。実はシジギアでバイト先も見つけたんだよね!」

「まじで?! 行動早いな。どんな?」

「養成学校の『魔女神話論』非常勤講師!」

「……は?! いやどうやって潜り込んだんだ……」

「えー? 人魚のウチに、それ聞いちゃう?」


 いたずらっぽく少女の顔でウィンクするネフェルスに、イチヒは慌ててふるふると首を振った。

 人魚といえば、『人を惑わす者』として有名だ。彼女が例えばそんな人の認識を惑わす『魔法』が使えたって不思議じゃない。

 なんだか恐ろしいので、そういうものは触れないに限る。

 ――そうしてネフェルスは、笑顔で船を降りていった。

 


 ここからは、イチヒとリリーゴールド、それからセトでの生活になる。

 卒業後も相変わらず、イチヒはリリーゴールドの副官になることが決まっていた。

 リリーゴールドも、空母アストライオスの艦長続投になる。まあ、アストライオスを動かせるのはセト以外にリリーゴールドしかいないのだから当然ではある。


 それが決まった時、リリーゴールドは「だから言ったでしょ?」って自慢げに笑っていた。


 

「それじゃ、アストライオスが起動するよー!」

「イエスマム!」


 艦長の号令に、わざと軍人らしく答えてみる。リリーゴールドが、はっとしてそれから楽しげに笑って敬礼した。


 空母アストライオスがどんどん上昇する。

 そうしてオゾン層を突っ切って、真っ暗な宇宙空間に飛び出した。


 これは、運命に翻弄された少女ふたりが、確かなバディになるまでの物語。

 そして――ここから、ふたりの伝説は始まっていく。

これにて1部、学校編完結です!!!

ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。


2人の物語は、学校卒業後も続きます。

白い男の謎、元帥の思惑とは。魔女とは一体なんだったのか……?

更なる謎へ迫っていく2人の物語。


ここで一区切りとして一旦完結とさせてください。また2人の続きをいつか描きたいと思っています。

今までありがとうございました!

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