表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

全てが終わった日

僕はきっと、死ぬはずだった。


けれど今の僕は、夏の風物詩が泣き叫ぶ中、病院のベッドに横たわっている。


ここにいる理由は、僕の足が骨折したからだ。


僕はとある日、都市伝説スポットへ向かった。


そこには怪物、人形、図書室、そして実験施設など、都市伝説通りのものが様々存在した。


そしてそこで、妙に親近感のある文字が記された謎の本をとある少女から受け取った。


そこには異世界の怪物が載せられていた。


ゴブリン、ガーゴイル、ミノタウロス、グール……。


どれも漫画やアニメでしか見たことない架空の生物たちだ。


しかし僕はその日、そんなありえない怪物の一部を見てしまい、実際に襲われたのだ。


どうやら異世界で死んだ怪物の亡霊が、この世に召喚され、現代の人形に憑依して現れたらしい。


そんな化け物に襲われて骨折した、というのが僕がここにいる本当の理由だ。


しかし、にわかには信じられないだろうし、周囲には言わないことにした。


そんなオカルトな本を読んで暇を潰そうと考えたが、あの日の出来事を思い出してどうにも開けなかった。


代わりに僕は、スマートフォンでSNSを開くことにした。


そして、自分自身の名前で思いついたように検索をかける。


桐生翔(きりゅう かける)


すると画面には、とあるネット記事のリンク先が貼られたものがヒットする。


そこに飛ぶと、当然ながら僕のことを書いた記事が表示される。





【中学記録を持つ未来のホープ桐生翔! 事故で足を大骨折!? 競技継続は──】






大袈裟にそう書いてあった。


自慢になるが、自分は陸上競技で中学時代に記録を作れるくらい速かった。


ただ高校に入ってからというもの、伸び悩んでしまった。


そのせいかネットでも散々な言われようで、早熟だったとか指導者が悪いとか悪口が溢れていた。


直接、嫌がらせを受けたこともある。


そのせいか、色んな人に迷惑をかけてしまった。


ただ自分が事故に遭ってからというもの、流石にそういう悪口や嫌がらせも無くなってきたらしい。


……とんだ手のひら返しだ。


ネットが正義というわけではないが、情報社会故にどうしてもそういうものは嫌でも目にしてしまう。


みんながあれやこれやと立てた曖昧な情報も、ネットの海に流される。


僕を含め有名人や、あの日出会った少女もその被害者になってしまう。


少女──もとい死神人形が出るという噂の館で、僕は本当にその子に出会った。


都市伝説では、死神人形に出会った者は殺されるらしい。


元々、廃墟化した都市伝説スポットの館へ行った理由も、死神人形が出るという噂を聞いたからだ。


でも死神人形と呼ばれたその子は、本当は物凄く繊細で優しかった。


そしてあの化け物が、異世界から召喚されたという衝撃の事実も彼女から聞き、実際にその情報で助けられた。


ネットであれやこれやと噂を立てられたせいで、殺されると思っていたがそんなことはなかったのだ。


ほんと、自分を含めて人間ってしょうもない。


そう思えた。


……だからこそ、あの事件が信じられない。


適当に僕は、最新のネット記事を閲覧する。


すると、僕の事故に関連したものが画面に現れる。




【桐生翔の指導者、自宅で死亡。死因は何者かによる他殺か】





僕の指導者である先生、三浦湊(みうら みなと)先生が、僕が怪我をしてから数日後に殺された。



僕が都市伝説スポットに行こうとしたきっかけを与えたのもこの先生だ。



色々ぶっ飛んでいた先生だったけど、明るくてよく陸上に関するアドバイスをよくしてくれた。



指導者として、僕としてはいい先生だと思っていた。


そんな三浦先生が、殺された。


僕はきっと知っている。


その犯人が誰なのか。


理由は彼女が時折、僕の学校や先生について聞いてきたというのもある。


その時は追求しなかったが、よくよく考えればなぜそのことを聞いてきたのか。


答えはやはり、先生の情報を聞き出したかったのだろう。


なぜあの子は、先生を殺したのか。


彼女がそうしなければならない理由が、絶対にあったはずだ。


だが、その真実が分からない。


「クエリィ……」


僕は死神人形が名乗った名前を、ボソリと呟いた。


三浦先生の遺体の状態としては、めったざしにされていて穴だらけ。


おそらくクエリィが持っていた、あの禍々しいナイフで刺したのだ。


出血多量での死亡。


悲惨な最期だというのに、記事の文章だけ読むと先生の死に顔が異常だったらしい。






“笑っていた”のだ。






……三浦先生、まさか貴方は。


ふと、僕はあの時のことを思い返す。


僕が都市伝説スポットに行こうとした、あの日を──。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ