歓迎と襲撃
リムは語尾に「ですわ」とかつけとけば貴族のお嬢様っぽい喋りになると思っている少し頭の弱い子という裏設定があったりなかったり どうでもいいですよね・・・はいすいません
「娘を助けてもらった事にまず礼を言おう」
あれから数時間後、スーアはスレイクードの屋敷の応接間に案内されて今はリムの父だという公爵の前に居る。
「しかし、リムナーヤの話ではそなた、詠唱も無しに大規模な魔法を使い、最強種であるドラゴンを容易く退けたとは事実か?」
白髪と髭が特徴的なおっさん、失礼、男性に訊かれスーアは、
「ああ、本当の事だが?」
と、答える。
「貴様!! 公爵様に対して無礼であろう!!」
横にいた執事の様な人が怒鳴る。
「礼をするって言うから慣れない馬に乗って着いてきたのに」
嘘である。馬には乗れたが所々痛くなるので結局は飛んできた。その様子にリムとアヤはやはり驚いていたが。
「む、確かに、礼をするために来てもらったのにいきなりこれではこちらが無礼であった。許すがよい」
「公爵様!! 公爵様が平民に許しを請うなど!!」
「よい、この者は娘の命の恩人だ、礼を尽くすのは当然であろう。それでその方、名はなんと申す?」
「俺? 俺はスーア、ただの旅人だよ」
スーアの名前を聞いた瞬間、一瞬だけ公爵の顔が厳しくなる。
「旅人? 旅をしているのにスレイクードの名を知らなかったんですの?」
今まで黙っていたリムが訊く。今は自宅だからか白いドレスを着ている。
「旅に出たのは最近だからな」
これは嘘ではない。確かに旅に出たのは最近、と言うよりも今日だ。
「ほう、してそなた出身は何処なのだ?」
(出身!? 全然考えてなかった!)
「え~~~~~……と」
スーアが必死に考えていると。
「よもや貴様! 罪人ではあるまいな!!」
どうやらスーアは執事に人に随分嫌われた様だ。
「いや、罪人ではないけど」
「ならば貴様の出身も答えられる筈だ!」
(何なんだこいつ? かなりウザいなぁ)
「まあ良いではないか爺、どのような素性であれ娘を助けて貰ったのだ。そなたが良ければ何時までもここに滞在してくれ」
なんともこの公爵、かなりの懐の深さだ。
「ぐ…旦那様がそう仰られるのならば、ではこの方のお部屋のご用意をしてきます」
最後にスーアを一瞬だけ睨むと執事は部屋を出て行った。
「すまぬな、昔から融通の効かぬ頭の固い奴でな」
「いやいや、気にしてないから」
「うむ、そう言ってくれると助かる。してそなた名をスーアといったな」
公爵の顔が少し厳しくなる
「その名はこの『世界』と同じ名だ。そなたは一体何者だ?」
「何者って、ただの旅人だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
しばらくスーアの顔を眺めていたが、公爵の顔が目に見えて柔らかくなる。
「ふむ、ならばそれで良い。とにかくそろそろ食事の時間だ、そなたの旅の話を聞かせてくれ」
「ああ、その程度なら喜んで」
(それ位なら今まで『世界』を創ってきた時のを話せばいいだけだしな)
丁度そのときドアを叩く音が聞こえ、公爵が入室を許可するとメイドが入ってきた。
「お食事の支度が出来ました」
(おお! 生のメイドさんだ! 感動だ! これで勝てる!!)
やはりスーアは少し残念な子のようだ。
食事も終え今は用意して貰った部屋でくつろぐスーア。
(このベッドふっかふかだー! ベッドなんて何百年ぶりだろう!)
今まで寝るときといえば空に浮かびながらとか『世界』に溶け込みながらだったので久しぶりのベッドにかなりはしゃいでる様子だ。
(このまま死んでもいい! 死ねないけど)
スーアが死ねばこの『世界』も終わりなのであまり縁起でもない発言は控えてほしいのだが。まあこのスーアは人形なので死んだところで影響はないのだが。
(ああ、なんだか一気に眠気が…………)
ドンドンドン!!
スーアが眠ってから約4時間、真夜中を少し過ぎたあたりで強烈なノックがされスーアを叩き起こした。
「なんだなんだ!」
「起きてくださいですわ! 開けますわよ!」
リムが血相を変えて部屋に飛び込んできた。
「なんだリムかどうした? こんな夜中に?」
「また私をそのような名で! 今はそんなこと言ってる場合ではないんですの! 昼間のドラゴンが屋敷を襲ってますの!」
どうやら昼間のドラゴンは流された事が余程頭にきたらしい。
「昼間のって、あの赤いの?」
「だからそうだと言っているでしょう!? 今屋敷にいる騎士たちが応戦してますが時間の問題ですわ!」
余程慌てているのか今から寝ます、と言わんばかりのネグリジェ姿でリムが叫ぶ。
「どうでもいいがその格好はどうかと思うぞ?」
その言葉にリムが自分の姿をみる
「っ! きゃあああ! 私このような姿で! み、見ないでくださいですわ!!」
「いや、見せたのはそっちだろう」
「と、とにかく! あなたも手を貸してくださいませ!!」
「判ったから服着てこいよ」
そう言うとスーアは窓から飛び降りた。
「もう、お嫁にいけませんわ……」
後には涙目になったリムだけが残された。
スーアが屋敷の前に辿りつく。そこには3匹の赤いドラゴンが空を飛び炎を吐きながら騎士たちと戦っている様子が見えた。
「おいおい、1匹じゃかなわないから仲間を引き連れてきたってか?」
『我ヲ虚仮ニシタ人間ヨ、出て来イ!! ココニイルノハワカッテイルゾ!!』
「あれ、竜って何時の間に喋れるようになったんだ? まじで知らなかった」
などと言っていると。
「おお! スーアか、どうやらそなたが退けたドラゴンが報復に来たようなのだ」
何時の間にか近くにいた公爵がスーアを見付け話しかけてきた。
公爵も戦う為なのか銀色に輝く全身鎧を着ていた。
「うん、それは聞いたけど……ドラゴンってあんなに喋るっけ?」
「何を言っておるのだ! ドラゴンは知能が高く好戦的なのが特徴であろうが!」
どうやらスーアが把握してないうちに進化したらしい。
「まあいいや。じゃあちょっと行ってくるよ」
「ま、待たんか! 一人でドラゴン3匹を相手にする気か!」
「大丈夫大丈夫、それより負傷者の手当てをしてあげてよ」
言い残し空に上がっていくスーア。
「おい! お前ら俺はここにいるぞ!」
その言葉に一斉にこちらを向くドラゴンたち。
『ソコニイタカ人間ヨ! 我ヲ虚仮ニシタ報イヲ受ケヨ!』
叫ぶと同時に炎を吐いてくるドラゴンたち。
『コノ炎ナラバ既ニ消シ炭ニナッテイルダロウ』
喉を鳴らし笑うドラゴン、しかし。
「それって負けフラグって奴? 初めて生できいたわ」
先程と全く変わらない姿で浮かぶスーアの声が響く。
『ナ、ナンダト!! 何故生キテイル!!』
焦るドラゴンたち。
「そりゃあ俺が特別製だからだろ。それよりこんな事する悪い子にはお仕置きが必要だなぁ!」
少しガラが悪くなっているスーア。
「折角おい返すだけにしておいてやったのになぁ! あぁん!」
……かなりガラが悪くなっているスーア。恐らくは安眠を妨害されたのが腹に据えかねたようだ。
「まず後ろの2匹からだ!」
スーアが杖を大きく振ると突風が吹き荒れ2匹のドラゴンの体を切り裂きながら吹き飛ばす。
「某有名クエストからパクった魔法だ! 効くだろう!」
飛ばされたドラゴンは地面に落ちピクリとも動かなくなる。
『ナゼ人間ゴトキガコンナニモ強イ魔法ヲツカエルノダ!?』
「特別製だって言っただろう?」
とそこに。
「スーア!無事ですの!?」
やっと着替え終わったのだろうか、リムとアヤが軽装鎧を着込んで屋敷から出てきた。
「お嬢様! 危険ですから屋敷の中にお戻りください!」
「私だって戦えますわ! さあ悪しきドラゴン! 私が相手になりますわ!!」
ある意味空気を読めないリムであった。
しかし、2人の姿を見たドラゴンがにやりと笑うと翼を翻し2人に向かう。
『貴様ガ倒セナイナラセメテモウ1人ヲ殺シテクレル!』
2人に向けて炎を吐くドラゴン。
「リ、リムナーヤーーーーーーーーーー!!」
叫ぶ公爵、他の騎士たちも思わず叫ぶ。
しかし、炎は彼女たちに届く前に消滅していく。ドラゴンが炎を吐いた瞬間、転移したスーアが炎を防いだ。
「少し悪ふざけが過ぎたなぁ、ドラゴン?」
彼女たちを庇うように杖を突き出したスーアがつぶやく。
「また助けられましたわ。もしやこの方は私の運命の……」
なにやらリムが呟いているがとりあえず無視をして。
「しばらく反省していろ」
突如ドラゴンの後ろに漆黒の穴が出現する。
『ナ、ナンダコノ魔法ハ!』
穴はドラゴンを吸い込み始める。ドラゴンは翼を必死に羽ばたかせ逃れようとするが、やがて完全にドラゴンを飲み込み穴は消滅した。
「しばらくしたら出してやるよ」
そしてしばらく呆然としていた公爵や騎士たちであったが。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
大歓声をあげるのだった。
「折角のベッドでの睡眠が台無しだよ」
初めての戦闘?なのかなぁこれ まあいいや っていうかこの小説って実際どうなんでしょう? 私は書いてて面白いですが読んでて面白いですか? できれば感想なんかくださればいいぁ・・・なんて思うんですが あ図々しいですね すみません




