プロローグ2
これでプロローグは終わりです
「確かにトラックに撥ねられた、というかすり潰された筈なんだけど・・・ってゆうかここ何処だよ」
彼が目覚めたのは『不思議』としか言い表す事が出来ない空間だった。
「何なんだ?ここ」
その空間は白いといえば白く、黒いといえば黒く、七色といえば七色そんな色合い。
しっかり両足で立っているような、ふわふわと浮いているいるような妙な感覚、一言で表すのならば『曖昧』。
「なんだか気持ち悪い所だな」
彼がそんな感想を述べた瞬間。
「気持ち悪いなんて随分な言い草ですねぇ」
ただの独り言にいきなりの返答、彼の友人が見ていれば笑い転げていただろう程に驚いていた。
「な!え?な?だゃれ!?」
噛み噛みだった。
「(だゃれって)くす 私? 私は創造を司る神の一柱」
「(笑われた!?)紙……じゃなくて神?」
「そう、神」
神と名乗った女性は柔らかく、それでいて優しそうに微笑んだ。
「で、えーと」
「何?」
「俺、死ななかった?」
「ええ、もうぼろぼろのぐちゃぐちゃ想像しないほうがいいわよ、気分が悪くなるから」
よく見れば薄い金色の瞳が細くなりこちらを見つめている。ちなみに髪の色も薄い金色だ。
(ぐちゃぐちゃ・・・おうぇ)
想像してしまったらしい彼は頭を少し振り気を取り直すと神に尋ねた。
「で、死んだ筈の俺が何でここにこうして生きているんだ?」
「それは、私があなたに用があるから」
いまだにその顔からほほ笑みを絶やさず彼を見つめる。
「用?」
「あなた・・・『世界』にならない?」
彼の頭は決して悪くはない、学力は普通でも頭の回転は早い方なのだ。その彼の頭の中を神の言葉が駆け巡る。
(世界? 世界って何? あれか? お前の拳で世界をとれ! とか黄金の右足で世界を狙え! とかそういう類いの話か?)
「いや俺あんまり運動神経いい方じゃないからそんなこと言われても。弟ならイケるかもしれないけども……」
「? …ああ! そうじゃなくて、『世界』そのものにならない? って事よ」
「『世界』酢の物? 何? 料理人にでもなって世界一の酢の物をつくれって事?」
訂正しよう彼の頭は悪い。
「酢の物じゃなくてそのもの。あなたが『世界』で『世界』があなたということよ」
神は慈しむような優しいため息を吐きながら説明を始める。
「『世界』とはまず何も無い空間から始まるの。何も無いなら何かを創る必要がある。けれど何も無い空間だからまず何かを創る何か、もしくは誰かを入れてあげる必要があるの。何も無い空間から突然何かが生まれる可能性は限りなく低いわ。だからまず何かを生み出す種を入れてあげるの。その種によって生まれるものも千差万別、例えばその種が樹木だった場合その『世界』は植物の楽園たる『世界』になるし、獣だった場合動物達の楽園たる『世界』になる訳。ここまで理解している?」
「え~と……とりあえず大丈夫」
「なら続きね。でその種が人間だった場合、人間しか居ない『世界』になると思う?」
「いや、人間だけじゃなく植物や動物も居るとおもう」
「そう、だから人間を『世界』の種にするの、そうすれば色々な種族がいる『世界』が生まれるのよ」
「じゃあ俺がもともといた世界もあんたが創ったって事か?」
「ええ、私が創りあげた『世界』よ」
彼女は慈しむようなそれでいて少し悲しげな表情でそう言った
「でも、あの『世界』も……もうすぐお終い」
「! 何で!?」
「あの『世界』の地球にいる人々がもうすぐあの『世界』を壊してしまうから……」
「そんな!」
「もうすぐって言ってもあと1、2000年位先なんだけどね」
「な、何だ、だいぶ先じゃないか」
「それでも何億年と過ごしてきた私にはもうすぐよ」
「原因は何なんだ?」
「地球の人々がこの先作り出す時空間に干渉する兵器が原因よ」
「時空間に干渉?」
「そう、そのせいで地球を中心に宇宙の崩壊が始まるの・・・」
(・・・今、ほーかいって相槌をうったら確実にKY野郎だなやめておこう)
彼はアホの子かもしれない。
「だからそうなる前に地球を消す事にしたの……」
「な、なんだってー!!」
「その時空間に干渉する技術が完成するのが今から約500年後、その兵器が完成するまであと約700年。
だからそれまでに地球を消す。けれど地球もそこに暮らす生き物達もみんな可愛い私の子供たち、だからその地球にいた子供たちの痕跡を少しでも残すために」
「俺を『世界』にするって訳か」
「ええ、それで『世界』になってみる?」
先程までとは180度違う態度で再度質問してくる神に対して彼は。
「やる、あんまり自信は無いけど今みたいな話を聞かされたらやらない訳にいかないだろ?」
「本当にいいの?」
「ああ! もちろんだ!」
「わかったわ、ならあなたを新たな『世界』に送るわね」
言いながら手を軽く振る、すると虚空に真っ黒な穴が開いた。
「この穴に入ればそこは新たな『世界』あなただけの『世界』よ。あとこれは私からの贈り物、向こうに行っても元気でね」
そう言うと神は一冊の黒い装丁の本と黒い光沢のある杖を渡した。
「ありがとう! じゃあ行ってくるよ!」
言いながら彼は穴に飛び込む、その姿が消える間際に彼は「ありがとう、母さん」と神に言った。
後に残されたのは嬉しそうな顔を浮かべた神だけだった。
「しかし人間1人で『世界』が創れるなんて・・・『世界』ってのは意外とお安く出来ているものだ」
どうでしたでしょうか?小説って難しいですね
ご意見・ご感想できればで良いのでお願いします




