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王都と王城と姫

難産でしたがなんとか形にできました








「ここが王都か」


村を出発してから数日、スーアたちは目的地である王都に到着した。


「はい、王都の正門です。北に行けば王城があり東に行けば魔法学園です」


「で、このまま学園に向かうのか?」


「はい、まず学生寮に向かって荷物を置いてきます」


門を通ろうとすると門番をしている兵士がこちらを見ながら小声で耳打ちをしている。


「兵たちの躾は今一つみたいだな」


小声でスーアが呟く。


すると、兵たちが近づいてきて馬車の前に立ち塞がり止める。


「聞こえたか?」


「そのウルフは貴様たちのものか?」


物珍しそうにきょろきょろと周りを見回しながら馬車の横を歩いていたフーを指差し兵士が聞く。


「何ですか貴方たちは! 無礼でしょう!」


アヤが嗜める。


「何だと!」


言い返す兵士と険悪な雰囲気になりかけている所でもう一人の兵士が馬車を見ると焦った声を上げる。


「おい! この馬車についている紋章をみろ!」


「な!? この紋章はスレイクード家の!」


「し、失礼しました!」


すぐに姿勢を正し敬礼する兵士たち。


「何の騒ぎですの?」


今まで馬車の中にいたリムが何事かと顔をだす。


「お嬢様、この者たちが無礼な振る舞いを!」


「どうかお許しを! 我々は姫様の命令で仕方なく!」


「事情がさっぱり飲み込めませんわ」


「ですから、この者たちが!」


「お許しを!」


「お前ら少し落ち着けよ」


「スーア様の仰る通りですわ」


とりあえず皆を落ち着かせ事情を聞くことにする。







「つまり、この国の我侭姫ってのが魔獣を欲しがっている訳なんだな?」


「はい、ですので魔獣を連れている者は城に連行するようにとの命令なんです」


我儘と言う所を否定しないあたりが兵士たちの苦労を物語る。


「おかしいですわね? 以前お会いした時はそのようなことありませんでしたわよ?」


リムが首を傾げながら話す。


「つい最近、魔獣を使った見世物をみてご自分も魔獣が欲しくなったらしいのです」


兵たちもうなだれながら話す。どこの世界でも苦労するのは下っ端の宿命のようだ。


「迷惑な姫様だな。そんな事の為にわざわざ兵を動かすか普通?」


自分の我侭の為に兵を動かす。あまり褒められた行為ではない。


「それを許している王も王だな、この国は上が腐ってきてるのか?」


「スーアさん! そんなことを言っては不敬罪で捕まってしまいますよ!」


王都の正門、それも兵士の前でとんでもない事を言うスーアにアヤはかなりの焦りを見せながら嗜める。


「とりあえず、フーが欲しいって言うならお断りだがな」


フーの頭を撫でながら兵士を睨みつけるスーア。フーは状況が分っていないのか、気持ち良さそうに目を閉じる。


「私たちは只の下っ端ですので命令には逆らえないんです」


「どうか、城に来て姫に直接お断りしてください」


この場で土下座までしそうな勢いで頭を下げる。


「お願いします! 連れて行かなければクビになっちゃうんです!」


「助けると思って!」


なりふり構わないとはこの事か。


「分かったよ、行くだけ行ってやるから頭を上げろよ」


憩いに負け城に行くのを了承するスーア。


「あ、ありがとうございます!」


更に深く頭を下げる兵たちにため息を吐く。


「そんな訳で悪いが城に行ってくる」


「いえ、私も行きますわ」


「は? 何で?」


「姫様には面識がありますの。きっとスーア様のお役に立てますわ」


任せろと言わんばかりに胸を拳で叩く。


「まあいいや。じゃあ案内してくれ」


心底行きたくないという気持ちを隠そうともせずにリムに頼む。


「わかりました !こちらです!」


嬉しそうに案内を始める兵士を先導に城に向かうスーア達だった。










王城の1室、豪華な作りの部屋の椅子の上に10歳程の少女の姿があった。


白銀の髪は腰の辺りまで伸びており、大きな黒い瞳が今は不機嫌に染まっている。


少女はかなり不機嫌な様子で机をバンバンと叩く。


「姫様、お行儀が悪いですよ」


傍に控えていた侍女が姫を嗜める。


「その様な事では将来この国を背負ってたつ者として」


「うるさいのじゃ!」


説教を遮り大声をあげる。


「そんな事よりわらわの魔獣はまだ来ぬのか!?」


「姫様、先日も1匹大きなトカゲをお買い上げになったばかりではないですか」


「まだ足りないのじゃ!」


立ち上がり床を蹴る、かなりの我侭っぷりだ。


コンコンコン


その時、扉がノックされる音がする。


「姫様、お客様をお連れしました」


兵士が1人入ってきて敬礼をしつつ報告する。


「客? 事前に約束した方ですか?」


「いえ、約束などは無いのですが……」


「約束のない者をいきなりここまで連れてきたのですか?」


侍女の目がつりあがり兵士を睨むが兵士は慌てながらも言い返す。


「ま、魔獣を連れている者はすぐに姫の下に連れてこい、との事でしたので」


その言葉に反応したのが


「魔獣を連れてきたのか!?」


やはりと言うかなんと言うか姫だった。


「はい、現在中庭の方で待ってもらってます」


「よし! すぐに向かうぞ!」


嬉しそうに叫ぶと颯爽と部屋を出て行く。


「姫様! お待ちください!」


侍女と兵士も慌てて追いかけて行く。













「わらわの魔獣はどこなのじゃ!?」


中庭に到着した姫はいきなり大声をあげて辺りを見回す。


「おお! その大きな狼がそうじゃな!? 中々良い面構えじゃのう」


フーを見付けた途端、所有者宣言をする辺りがやはり我侭姫の所以なのだろう。


中庭に案内されて姫を待っていたスーアたちはいきなりの事に驚くが我にかえったスーアが反論する。


「誰がお前のだ? 身分が高ければ何でもして良い訳じゃないんだぞ?」


「貴方! 無礼でありましょう!!」


やっと追いついた侍女が息を切らせながらも叫ぶ。


「何処に言っても無礼無礼と他に言うことないのか?」


ため息まじりに指摘する。


「そもそも、フーは生きてるんだ。生き物を自分の所有物扱いするのは気に食わない」


(俺の子ながら情けない。教育してやる必要があるな)


内心そんな事を思いつつ、軽く睨んでやる。


「わらわは姫じゃぞ! 偉いんだぞ! 逆らうなら死刑にしてやるのじゃ!」


しばらく呆然としていた姫が地団駄を踏みながら叫ぶ。


「上等だ! 出来るものならやってみろ!」


売り言葉に買い言葉。そんな表現が良く似合う状況だ。


「お、お待ちくださいスーア様! 姫様もまずは落ち着いてくださいですわ!」


リムが慌てて止めに入る。


「誰じゃ! お主は!」


癇癪を起こしリムを睨みつける。


「私です、リムナーヤ・アストラ・スレイクードですわ。とにかく落ち着いてくださいまし!」


「うるさいのじゃ! その者はわらわを、王家を愚弄したのじゃ! 許される事ではないのじゃ!」


幼いながらも鋭い眼光でスーアを睨みつける。


「だったらどうする?」


更に挑発を重ねる。


「処刑じゃ! 公の場で貴様に罰を与えてやるのじゃ!! こやつを捕らえるのじゃ!」


言った途端、どこに居たのか大勢の騎士たちが押し寄せスーアを拘束する。


「いいだろう! やれるものならな!」


「国の法に合わせての公開処刑じゃ! 連れていくのじゃ!」


おとなしく連行されて行くスーア。


「ひ、姫様! どうかおやめください!」


「ふん! もう遅いのじゃ! そち達も見物していくといいのじゃ!」


言い残し歩き去る姫。


後に残ったのは顔面蒼白になったリムだけであった……。














「さーて、どうしてやるかな?」

次回、戦闘予定


う~誰か感想をください


作者のやる気があがるかも!?

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