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色々と迷いながら結局こんな形に落ち着きました






公爵の屋敷を出発してから4日が経過した。今は宿泊のために小さな村にいる。


途中、空を飛んで行こうと提案したが却下された。


何でも「スーアさんの魔力で飛ぶと馬車が壊れます」との事だ。


ちゃんと保護しながら飛ぶと言っても信じて貰えなかった。


「大丈夫だって言ってるのにさ……」


「私は信じてますわ! スーア様!」


道端の小石を蹴りながら拗ねるスーアと励ますリム。


「では私は宿を手配して来ますね」「あ、お供します」


言い残し苦笑さながら歩き出すアヤ、馬車を引きつれ御者(38歳人族男性)も続く。


(はっ! スーア様と2人きり! これはチャンスですわ)


「ス、スーア様! 少し辺りを散歩いたしませんか!?」


リムの攻撃、リムは散歩に誘った。


「ん~、面倒だからいいや」


ミス、リムの攻撃は当たらなかった。


「そんな事仰らずに行きましょう!」


リムは食い下がった。


「だから面倒だって。そもそもアヤ達を待たなくちゃいけないだろ?」


スーアは正論を唱えた。


「あの2人は待たせておけばいいのですわ」


リムは何気に酷いことを言った。


「いやいや、良くはないだろう」


スーアは的確なツッコミをした。


「でも、せっかくの2人きりですのよ?」


リムは首を“こてん”とかしげた。


「お、そんな事言ってたらアヤが戻ってきたぞ」


スーアがリムの仕草を無視したところで制限時間が来た様です。次の戦いまで御機嫌よう。


「アヤ! 何故もう少し遅くしなかったんですの!?」


「ええ!? お待たせしてはいけないと思いまして!」


早く仕事を終わらせたアヤに怒るリム。


まさか怒られるとは思っていないアヤは驚いている様子だ。


「とりあえず、宿まで案内してくれ」


「あ、はい。こちらです」


逃げ場をもらったアヤはすぐさま歩き出す。


「アヤ! 話はまだ終わってませんわよ!」


言いながらもしっかり後を着いてくるリム。









「やっと落ち着けるのは良いんだけど……暇だ」


宿の2階、1人部屋の少し硬いベッドに腰掛ながらスーアは呟く。


隣にはリムとアヤの部屋、御者の人は一番安い1階の大部屋で雑魚寝だそうだ。


「……さっきリムには面倒だって言ったけど、散歩にでも行くか」


立ち上がりドアを開け階段を下りて外へ出る。


「魔獣がでたぞーーー!!」


瞬間、村人が走りながら叫ぶ。


「魔獣だって!」


「何でこんな所に!?」


「ああ! 神様!」


途端に村が騒がしくなる。


「おい! 魔獣は何処だ!?」


1人の剣士風の者が村人に声をかける。


「北の方だ! でかい狼みたいな奴が何匹もいやがる!」


「分かった、北だな!」


聞くと同時に走り出す剣士。


「おい! 危ないぞ!」


「大丈夫だ! こう見えても私は強い!」


自身満々に答え走り去る。


「……出遅れた」


声を掛けるタイミングを失い、ただ一人ポツンと立っていた。


「何て言ってる場合じゃないな、追いかけよう」


そしてスーアも北へと走り出した。












「おお! 結構いっぱいいる!」


北へ向けて走ること数十分、遥か前方に巨大な狼の群れと、それと戦う翼の生えた剣士の姿があった



「はあっ! たあっ!」


剣士は空から急降下しながら斬りつけ、また空へと上昇する。



「鳥人だったのか。ヒット&アウェイとはやるなぁ」


しかし、多勢に無勢。降下し斬りつけ空へ上がろうとする剣士の横から一匹の狼が飛び掛る。


「ぐぁっ!」


バランスを崩し地面にヘッドスライディングする剣士。


「これはヤバイな」


翼を痛めたのか空に上がらず苦痛の顔をしながら立ち上がり、その場で剣を構える。


その間にも狼は徐々に剣士を包囲していく。


「スピードをあげるか」


狼の群れまで目測40km、平らな草原なのを良い事にぐんぐん速度を上げる。


しかし、完全に包囲されてしまった剣士は苦戦を強いられている。


常に剣士の死角から飛び掛る狼、剣士も勘を頼りにしのいでいるが時間の問題だろう。


「くっ! はぁっ!」


剣士の背後から狼が襲う、それを剣を払い斬りつける。


「キャン!」


甲高い声で痛みを訴える狼、だがすぐに起き上がり威嚇してくる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


既に剣士の息は荒く限界を迎えようとしていた。


狼もこれで終わらせようというのか、全ての狼が低く構えた。


その時。


「きゃぃぃぃぃん!」


最後列にいた狼が悲鳴をあげながら空へと舞い上がる。


1匹、また1匹と空へ飛んでいく。


「は?」


その冗談のような光景に剣士は思わず間の抜けた声をだしてしまった。


狼を飛ばしている原因であろう者の姿が見える。


「大丈夫か?」


スーアである。


この状況の原因、敵の姿を見つけ飛び掛る狼、その狼を。


「ホーームラーーーーーン!!」


次々と杖で打ち返すスーア、完全に野球か何かをしている気分だ。


その異常を見た狼たちは我先にと逃げ出すものと腹を見せて服従するものとに分かれた。


「あれ? もう終わり? まぁ、良いけど……」


物足りないのか、少し残念なスーアだった。


「あ、あの? 貴方は?」


その場に力なく座り込む剣士。所々から出血しているが命に別状は無いようだ。


「その前に怪我を治すけど良いか?」


杖を向けると淡い光が剣士を包む。すると、剣士の体の傷がみるみる癒えていく。


「こ…これ…は……」


窮地が去った事と傷が癒えた安堵などが一気に襲ったのか剣士が倒れこむ。


「あらら、気絶しちゃったよ。しょうがない村まで運ぶか」


剣士の体を持ち上げようとすると“ふにょん”とした感触を感じた。


「この感触はまさか……! 女の子!」


確かによく見れば剣士にしては華奢な体をしている。


「参ったなぁ、これじゃ起きた時に何言われるか分からないぞ。主にリムに」


スーアが首を振りながら呟く。


すると、視線の端にまだ服従のポーズをしている狼を見付ける。


「お前、ちょっとこの娘を運ぶの手伝え」


狼はすぐに立ち上がりスーアの所まで近づき、その場にしゃがむ。


「よし、さっさと村に帰ろう」


「ウォン!」


狼の背に少女を乗せると自分の足で走り出す。


狼も少女を落とさないように気をつけながら走り出す。

















「胸触った事は黙っておけよ」


「ウォン?」

最後の一言に初めてスーア以外の声が出ました   この先の展開は何一つ考えていません

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