表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/100

93.『戯言ながし』

かつて「きゅうじゅうさん」だったもの

音楽性を失った右目は、

昨夜の交響曲を拒絶し、

赤い絨毯の裏で静かに涙を流している。


眼鏡を撫でながら笑う前歯の軽薄さは、

誰の秘密も噛み砕かずにただ音を立てて崩れていく。


厳かな大腿に浮かぶ蛇の目傘は、

過去の土砂降りを記憶しているが、

雨を待ってはいけない。


近代哲学と巻き爪の因果を語ったかき氷は、

舌の上で沸騰して倫理学に新たな湿度を与えた。


金字塔を差し込まれた腋から夏の亡霊がすり抜け、

涼しい声だけが残響している。


あなたと私を隔てる鶏皮は、

火の通り具合を計りながら、

世界の境界線を炙っていた。


明朝体と踊るカポエラの鼻が削げてしまっても、

職員たちは誰一人として書類を落とさなかったという。


指で編んだ凧は空を目指さず地を這い、

土の感触だけを愛していたように思える。


お前の肩にお酒を載せても、

太陽は錯乱したまま責任をとろうとはしなかった。


月に肘打ちを繰り返す爆弾魔の子守歌は、

柚子胡椒のように辛く、尾を引いた。


灯篭流しの川で脈を比べてみると、

流れていったのは灯ではない。

ただただ、僕の不在だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ