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92.『あるがままを抱きしめて』
かつて「きゅうじゅうに」だったもの
終わり良ければ、すべて良し。
そう言われても、終わりが見えない日々の方が長い。
ならば、終わりを気にするのは少し先でいい。
死が確実なゴールである以上、今はただの途中だ。
ゴールにばかり目を向けていたら、
風に揺れる木々や、今日の天気の変化に気づけなくなる。
「これでいいのか」と問うたびに、足元の石につまずく。
でも、足を動かしている限り、道は続いていく。
心はしばしば何かにつけて騒ぎたてる。
不安が、恐怖が、憂鬱が、次々と声を上げてくる。
けれど、感じることと、行うことは別物だ。
雨が降っても、傘を差せばいい。
悲しくても、ご飯は食べられる。
心に逆らわず、かといって従いすぎず。
ただ一歩、また一歩と歩いていく。
酸いも甘いも噛み分ける。
今日は苦くても、明日は甘いかもしれない。
そもそも苦みも一つの味である。
夜空の星々が時に曇っても、
空がそこにあることを、私たちは知っている。
あるがままを否定せず、焦らず、無理せず。
ただ、為すべきことを成す。
生きるとは、心に振り回されながらも、
なお、日々の営みを繰り返すことなのだ。