83.『戯言くずれ』
かつて「はちじゅうさん」だったもの
絢爛豪華に見える動画配信の裏側。
煌めくスクリーンの向こうで、無意識にかしずく声が透けて見える。
その再生回数の義務感に日々を溺れている。
脳内に潜む宇宙人たちの声にほだされて、血眼になって褒美を受け取る。
口からは年中涎が垂れているが、それすらも気付いていない。
迷路が気持ち悪いと感じて、自然の美しさに思いを寄せる。
ひたすら脳に矯正器具を嵌めることで生き方を強制される愚かさ。
どこかで求められた「正しさ」を無理やり身体に染み込ませる。
表面積を削り取る作業、その行く末を憂い、道しるべもないまま項垂れる。
除草剤で容易に消える悪夢だったらと妄想に思いを寄せる。
電波が届けば、空き缶ですらいつかは走り出すだろう。
束になれば、その力は驚くほど恐ろしいものになる。
それを誰も予測できない。
誰も気づかないうちに僕らはその力に引き寄せられている。
世界の雲を集め、積乱雲として繋がったその塊。
それは進化の証だろうか、人間の均一化を象徴しているのだろうか。
個々の違いなどなくなり、すべてが一つになりつつある。
百貨店で背伸びしてみても、手に入れきれぬ欲望に突き動かされる。
100円ショップへの流れを阻むことなく、一層強く流れていく。
無駄に手を伸ばしても届かないのに、こだわり続ける、
無理して届いた時には身を削っている。
うん、愚かさに慣れてしまった。
「かまととぶるな、カマキリ野郎よ」
と、自分に言い聞かせる。
「チンゲン菜に満ちた世界で何が違うというのか?」
今日も意味のない言葉を叫んで何かに成れたように思いこむ。