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8.『象の鎖と篭絡された恐怖』
かつて「はち」だったもの
透ける仮面の下の強面は、植え付けられた恐怖に篭絡されている。
屈強な兵士であったはずの彼であっても、支配が一度芽吹けば、
手入れは不要であるかのように、茎が折れてもただ水を与えられるだけ。
そして、水を吸っても生き返らない花は捨てられる。
人工的な不自然の中で淘汰されることへの違和感は深い。
操作不能の心身は懐柔され、反逆の兆しが見えても、初動の意欲は喚起されない。
サーカスの象のように、鎖に繋がれた習性は無意識の奥底に刻まれる。
自分を押し殺すことで、自己破壊から身を守ろうとする。
潜在能力は必要だが、希望や挑戦に打ちひしがれることもある。
古傷が塩で炙られるような痛みを感じても、根を抜いて歩き始める。
腑抜けた強面を殴ることで、それが誰かの手土産になるかもしれない。