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6.『朱色の炎と終わりの定義』
かつて「ろく」だったもの
無償の代償がいかに大きいものであったか、揺れ動く天秤を見て理解した。
人々は社会的な裁きを求めるが、私は自らの命をもって償いたい。
逃げているわけではないが、ある意味で、誰からも裁かれたくないのだ。
私が人生をかけて築いた制度は、いまや教科書で圧政の象徴として見せしめにされている。
彼女がそれでも誇りを失わないことを渡しは知っている。
だからこそ、彼女の傷口に塩を塗りたくってやりたい。
彼女の強さを認められない私は何者でもない。
いつか来る裁きを待つくらいなら、敢えて彼女の建築物に火を灯す。
恐怖と憎悪、懺悔の入り混じった赤は、意外にも美しかった。
私は何も感じなかった。
燃え上がり、朱色の炎に包まれたその瞬間を、私は終わりと定義した。
私の旅路はここで終わりなのだ。
しかし、この明るく照らされた建物が誰かにとっての希望と邂逅になるなら、これ以上の喜びはない。
後悔はないと言いながら、鼻息荒く後世に思いを馳せる私は、尚も醜い。