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58.『戯言たらし』

かつて「ごじゅうはち」だったもの

耄碌した翁に嘲笑われたあの日、僕は現実を否応なしに突きつけられた。


それは屈辱的な瞬間であったが、同時に自分を見つめ直すきっかけとなった。

あの一言がなければ、僕はこの新しい自分に生まれ変わることはできなかったのだろう。


気がつけば冷え性になっていた。

布団の中で足先がいつまでも冷たい。


芯の温もりが体に届いていないのか、それとも心の真が冷めてしまったのか。

どちらにしても、冷たさが僕に静かに語りかけてくる。


嫌いなものを「嫌いだ」と口に出してみた。

それだけのことなのに、ニキビが減ったのは不思議だった。

心の中に溜め込んでいた小さなストレスが、皮膚の表面に現れていたのかもしれない。


野菜を美味しいと感じるようになった時は驚いた。

子どもの頃には想像もできなかった感覚だ。

年を取ると、体が求める栄養が変わるのだろうか。

それとも、味覚が変わったのは、経験による修飾が加わったから。


文化の飛躍が進むにつれ、人間はどんどん拡張しているように見える。

けれど、それと同時に分化も進んでいるような気がしてならない。

一つになろうとしながらも、どこかで分断を作り出している。

その矛盾が妙に引っかかる。


爪や髪を切るタイミングが、未だに掴めない。

爪は思った以上に伸びていて、髪はあっという間に不格好になる。

それぞれの伸びる速度が違うせいだろうか。

それとも、日常の些細な変化に気を配れていない自分がいるだけなのだろうか。


孤独を楽しむことができるのは、他者といる時間があるからだ。


そう考える自分を、少し天邪鬼だと思った。

他者との時間がなければ、孤独はただの孤立に変わる。


けれど、孤独があるからこそ、自分だけの時間を楽しめる。

そのバランスを揺らすことなく保つのは、思った以上に難しい。


ぶつぶつ呟く僕の頭。

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