表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/100

54.『戯言喰らい』

鴨肉を捕まえたが、煮込むべきか、焼くべきか。

その判断を祖母に任せたかったが、もうその選択を聞くことはできない。

温かい食卓の記憶はあるのに、それを再現する術は失われてしまった。


筋肉がビクつく様子を見つめる彼女は無表情だった。

その冷たさが余計に僕の体を震わせる。

自分が無意識に身震いしていることにすら気づいていない彼女。

心の奥で小さな棘が刺さる感覚を覚えた。


枯れ果てた溜池を目の前にして、そこに寄付できるだけの涙が無限にあるように思えた。

だが、それはただの幻想だ。

いくら涙を流しても、乾いた大地は何も変わらない。

泣いても笑っても太陽は沈む。


これ見よがしに走り出したアイツの靴が左右でチグハグだった。

滑稽さに笑いそうになったが、あの足音が妙に響いて離れない。

あの靴は何を象徴しているのだろうか。

たったかたったか。


不調和なのか、それとも必死さなのか。


奇妙な模様の服を身にまとったあの人物が、喝采を受けている。

だが、彼を照らすスポットライトの光はどこか異常だった。

派手な演出に隠された何かが、見えない闇となっている気がした。

横断幕の裏にいるあなたは誰。


荒野に沈む夕日は、どこか物悲しい。

しかし、私にとって夕日も太陽も、昨日捨ててしまったものだ。

燃え尽きた過去の光は、今日の僕を照らしてはくれない。

たとえ明日日が昇っても僕を照らすことはない。


キーボードを叩く音が高速で鳴り響く。

効率だけでは割り切れない何かが、この音には宿っている気がする。


イヤホンのコードから流れる音楽に浸っていたつもりだった。

だが、それは切れた糸電話のように滑稽だったはずだ。

実際には音は届かず、ただ空虚な振動だけが耳の奥に響いていた。


自分の中にいる怪獣が火を噴かないのは、どうしてだろう。

彼はずっと眠り続けている。

憤怒を持っているはずなのに、それを爆発させる術がわからない。

それが残念でならない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ