47.『冷蔵庫の光と赤い信号』
かつて「よんじゅうなな」だったもの
寝ている途中で目が覚めたのだと思う。
中途覚醒時は咄嗟に状況を理解できない。
額に汗を浮かべながら、歩き慣れた部屋を半目で彷徨う。
熱い。
冷蔵庫のドアを開けると、中から漏れ出る光がそっと部屋の中を照らした。
ああ、やっぱりここは私の部屋で間違いないようだ。
最近はもっぱら水しか飲まなくなった。
お茶やジュースも嫌いではない。
ただ、自然と水という何の癖もない味に、
静寂な透明な液体に優しさを感じるようになったのだ。
喉を鳴らしながら、一気に1本飲み干す。
汗で服も濡れており、少し脱水になっていたのかもしれない。
そのひんやりとした感触が、喉から胸の奥に広がっていく。
冷蔵庫の扉を閉めると光が消え、部屋は再び闇に包まれる。
ふと窓の外を見ると、道路の信号機が一斉に赤に変わった。
静まり返った夜の街の中で、その赤い光が点々と並ぶのが妙だった。
正面に見えるマンションの窓を見上げる。
そういえば、あのマンションの全ての電気が消えているのを見たことがない。
どこかしらで灯りがともっている。
誰かがいつも起きている。
しばらく景色を眺めていたが、再び眠気に負けてベッドに潜り込む。
目を閉じると、記憶の中に残る嫌な感触が浮かび上がる。
覚えていないが、嫌な夢を見ていた気がする。
その夢が再び僕をどこかへ連れ込もうとしているのを、感じ取ることができた。
現実と夢。
その曖昧な境界で、僕は静かに目を閉じた。