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45.『振り返ってはいけない』

かつて「よんじゅうご」だったもの

何年も噛み合っていた歯車。

小さな錆で完全に動きを止めてしまった。


少しのズレなら修復も可能だったかもしれない。

だが今となってはその可能性すら消えてしまった。


なぜ不協和音を生み出してしまったのか。

いわんや自分では違和感に気づいていなかった。


身から出た錆。


何十年と時を刻んできた古時計でさえ、いつかはその活動を終える時が来る。

それでも強固だと妄信していた絆がここまで脆いものだったなんて。


受け入れるしかなかった。


最初は小さな亀裂だった。

それは時間とともに拡大し、埋めることすらできない大きな溝となった。

解決策のない溝の深さは、無限に思えるほどだった。


裂け目を挟んで向かい合っていた私たち。

溝の存在にも気付かない彼は驚いているだろう。

それでも踵を返して壁に背を向ける。

それぞれが別々の道を歩み始める。


振り返ってはいけない。

彼女の姿が見えてしまうから。


振り返ってはいけない。

見えたところで、溝を渡ることはもう叶わないから。


振り返ってはいけない。

触れられない現実は冷たいのだから。


それでも、振り返らずに進む理由は一つだけ。

私はまだ生きているからだ。


溝の向こうに残したものを胸にしまう。

私はこの足を前に進めるしかない。


歩みを止めてはいけない。

その道の先に何が待っているのかは分からない。


それでも一歩を刻むのが、僕にできる唯一の選択だった。

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