表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/100

38.『茶色い瞳と彼女の横顔』

かつて「さんじゅうはち」だったもの

隣の席の彼女は、目立つような子ではなかった。


無難な服装に、何の変哲もない一様な化粧。

教室ではただ静かに座っているだけで、友人と話している姿を見たことがない。


そして、不思議なことに、教室の外で彼女に会うことも一度もなかった。


それでも、彼女の横顔を初めて見たとき、僕は心を奪われた。


「美しい」

そう思った。


だが、それは単なる好意や恋愛感情ではなかった。

むしろ感傷に近い感動だった。

彼女の横顔には、何か言葉で表現できない特別なものがあった。


昨夜、彼女の夢を見た。

水中に潜り、海底から太陽の光が差し込む水面を見上げる彼女。

透明な水に体を沈めているはずなのに、涙を流しているように見えた。

無数の泡が彼女の体をすり抜けて、水面へと向かっていく。


光を浴びて輝く茶色い瞳。

耳から顎にかけての曲線は、それ以上が考えられないほど完璧だった。

その光景は、ただひたすらに美しかった。


目を覚ました後も、彼女の横顔が頭から離れなかった。

夢の中で見た彼女の姿が、心に深く刻み込まれていた。


僕は彼女のことを知っているわけではない。

名前すら覚えていない。


それでも、あの横顔だけは、これからも忘れることはないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ