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37.『魂の埋葬と新たな一歩』

かつて「さんじゅうなな」だったもの

両親の死体と飛び散った血液が眼前に広がる。

肉片となった悪臭が鼻腔を揺らす。


裏切られたという言葉では、この気持ちを到底表現しきれない。

彼女の冷たい表情、軽薄な言葉が脳裏に焼き付いて離れない。


胸が焼けるように痛み、精神が崩れ落ちていく。

生命活動は続いているが、魂が死んでしまったのだとわかった。

この背信によって、僕は殺されたにも等しい。


衝撃はあまりにも大きく、悲しみだけを残し、体の感覚は完全に消え去った。

脳が揺れ、自我が波打ち、記憶も定着しない。


「ここはどこだ、何をしていたんだっけ」


時間はただ流れるだけで、何も実感を伴わない。

車窓から流れる景色のように。

現実が遠く離れた場所で進んでいくのを眺めているだけだった。


ようやく五感を取り戻し始めても、眼球は黒く染まり、心臓は空洞のままだった。


「許さない、許さない、許さない」


その言葉が心の中で響き続ける。

許す必要も感じない。

過去は変えられないのだから。


一度死んだのだと自分に言い聞かせた。

過去の自分を悲愴と一緒に埋葬しよう。

それしか前に進む術がなかった。


「あなたが求めるなら与えましょう」


新しい自分の魂に、小さな蝋燭の火が灯った。

それは線香花火のように儚く、小さく揺れている。


膝を立て、重たい脚を動かし、一歩目を踏みしめた。

その一歩が、どこへ続くのかはわからない。


それでも、自分自身を抱えて歩き出すしかなかった。

黒く染まった眼球の向こうに、いつか光が見える日が来ることを信じながら。

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