23.『心臓しぼりと人間歯車』
かつて「にじゅうさん」だったもの
暗い部屋の中、机の上に置かれた心臓が拷問器具にかけられている。
その動きは機械的で、滴る赤い液体が金属のお盆に几帳面に溜められていく。
その血液は、やがて漏斗を使って再び心臓へと流し込まれる。
心臓は拍動を続け、全身に血液を送っているかのように見える。
しかし、それは勘違いでしかない。
「哀れな臓器だ」
彼はそう呟いた。
この心臓は誰のためでもなく、ただ生かされ続けているだけだった。
その存在に目的はない。
ただ動き続ける、それだけだった。
・・・。
突然、彼は目を覚ました。
夢から覚めたのだと思い、目を開いて辺りを見渡す。
視界に広がるのは、無数の人間たちが巨大な機械の歯車として回り続ける光景だった。
その数は何千、何万にも及び、最初はそれが人間だと認識できなかった。
歯車として回る人々。
それはまるで社会そのものの縮図のようだった。
彼は考える。
これは現実なのか、それともまだ夢の中なのか。
答えが見つからないまま、彼は再び目を閉じる。
現実から逃げるように、思考そのものを閉じた。
「かく言う私も、夢に逃げるわけである」
そう言葉を漏らして、彼は再び暗闇へと身を委ねた。
歯車として生きるのではなく、夢の中で自由を求めること。
それが彼にとって唯一の救いだったのかもしれない。