21.『健気な心臓たちの行進』
かつて「にじゅういち」だったもの
砕けた氷に辛子を塗る行為。
それは、ただの奇抜な行動ではなく、彼にとっては挑発の儀式だった。
冷たい氷に辛子の香料が絡み合う瞬間、彼の心に何かが疼いた。
その匂いに誘われたかのように、小さな充血した目のひよこが寄ってくる。
彼らは、ただの観客だ。
蠟燭が静かに溶け、炎の熱で花が咲くように、彼の頬には久しぶりに涙が流れた。
その涙が意味するのは後悔か、それとも単なる浄化か。
彼自身にも分からなかった。
青い蛙が解剖され、心臓が取り出される。
整然と並べられたそれらは、まるで生命を主張するかのように、自動で脈打ち続ける。
その光景は不気味でありながら、美しさも感じさせた。
その心臓たちは、秘められた野心を糧に、自信ありげに活動を続ける。
「天晴だ」
彼は心の中でそう呟いた。
しかし、現実はいつも過酷だ。
降りしきる刃は心臓たちを銀杏切りに、微塵切りにと、無慈悲に夢を刻んでいく。
そして、彼はその断片を拾い集め、熱し、固め、まるでバターのように塗り広げた。
誰もいない世界の中で、彼は自らの旗印を掲げる。
それが重くても、彼は何度でも振り続けた。
異形な模様が世界に広がる。
それは、彼の苦行の叫びそのものだった。
だが、その模様は瞬く間に塗り重ねられ、埋もれてしまった。
無数の糾弾が、その中で消えていく。
「異常は異常のままで存在する。それを包括する莫大な質量を、誰が理解できるだろうか」
彼の思考はもはや混沌と化していた。
その質量は脳がついていける限界をはるかに超えていた。
彼は立ち尽くしながら、ただその圧倒的な感覚に飲み込まれていった。
彼もまた健気な心臓の一つに過ぎないのだ。